研究課題
iPS細胞からの胚様体形成法による心筋定方向性分化誘導において細胞株ごとにサイトカイン濃度を最適化し、特定の細胞内シグナルに作用する化合物Xを投与することにより、多くのヒトES/iPS細胞株において60-70%が心筋特異的トロポニンT陽性心筋細胞に分化させることが可能であった。さらに、分化誘導法を改良することにより心筋分化効率が改善した。これらの方法で作製した心筋細胞を、心筋特異的なマーカーであるSIRPαの抗体等の抗体の組み合わせによりセルソーターを用いてソーティングすることにより、95%程度の純度の分化心筋細胞を得ることが可能であった。この心筋分化系を用いてiPS細胞由来心筋細胞の移植治療における生着効率を測定した。初めに、細胞移植生着効率を経時的に定量化するために、ルシフェラーゼを恒常的に発現するiPS細胞株を用いて、マウス心臓への細胞移植を行ったところ、移植細胞数とin vivoイメージングシグナルが相関し、生着細胞数を定量的に測定できることが分かった。この細胞株を用いて未分化iPS細胞、中胚葉分化細胞、および分化した心筋細胞をNOGマウスの非虚血心に直接注入したところ、未分化iPS細胞、中胚葉細胞では生着が認められなかったが、心筋分化細胞においては細胞生着が認められた。組織所見でも移植心筋細胞が心筋細胞として生着している様子が観察された。さらに分化心筋細胞自体の正確な生着能を評価するために、心筋特異的αMHCプロモーターにGFPを組み込んだ細胞株を作製し、これらのレポーターにより純化された心筋細胞を用いた細胞移植実験系でのより詳細な解析を現在行っている。
2: おおむね順調に進展している
ヒトES/iPS細胞からの定方向性分化誘導法の改良を行い、高効率の心筋細胞分化誘導が可能になった。既知の抗体によるソーティングにより高純度の心筋細胞を得ることが可能であったが、より純度の高い心筋細胞を得る必要があると考えられた。そのため細胞移植のための心筋純度を高めるために心筋特異的レポーターシステムを開発した。また、生存移植細胞数をモニターするためのルシフェラーゼ発現細胞によるin vivoイメージングシステムを構築した。これらのシステムを用いて移植細胞の生着を評価したところ、未分化iPS細胞、中胚葉細胞では移植細胞の生着が認められなかったが、分化心筋細胞においては細胞生着が認められた。また移植した細胞の生着を、レシピエントマウスの心臓組織の組織学的解析により確認した。現在はさらに移植した細胞に関する、より詳細な解析を行っていくことを検討している。以上のように当初検討していた実験計画に関してはおおむね順調に進展していると考えている。
これまでの検討において分化心筋細胞が細胞移植後に生着することは確認できたため、今後はさらに、各分化段階における生着の違いを解析していく。また生着効率を改善する因子の探索も進める。移植後の細胞に関しては、移植心臓組織を免疫染色法や電子顕微鏡による形態観察により解析を進める。また、移植後の細胞を回収し、移植前の細胞と遺伝子発現などの比較を行い、in vivoでの分化が進んでいるかを調べる。遺伝子発現解析等により、移植細胞が移植後にどのように変化したのかを評価するとともに、in vivo心筋分化能と相関するマーカー遺伝子群を探索する。また、サイトカインや低分子化合物の投与により移植心への生着効率を上昇させる方法を探索する。
該当なし
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Circulation Journal
巻: in press ページ: in press
10.1253/circj.CJ-12-0987
Circulation Research
巻: 111 (9) ページ: 1108-1110
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http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/yoshida/