研究概要 |
10種類のメンバーによって構成されるTMEM16 familyの機能を解析を行った。具体的には、TMEM16A,16Bにおいて報告されているカルシウム依存的なクロライドチャネル活性化が全てのメンバーにおいて保存されているのか、また我々がTMEM16Fにおいて見出したカルシウム依存的なリン脂質スクランブル活性が全てのメンバーに保存されているのかを調べた。HEK293T細胞にTMEM16 familyを過剰発現させ、パッチクランプ法により電流を調べたところ、TMEM16A,16Bに強いクロライドチャネル活性を確認したが、他のメンバーには認められなかった。一方、リン脂質のスクランブル活性を完全に消失したTMEM16F欠損細胞にTMEM16 familyを過剰発現させ、リン脂質のスクランブル活性をFACSを用いて調べたところ、TMEM16C,16D,16F,16G,16Jにリン脂質スクランブル活性を確認したが、クロライドチャネルであるTMEM16A,16Bにその活性は認められなかった。以上よりTMEM16 familyメンバーのリン脂質スクランブルは、クロライドチャネル活性とは関係なく発揮されると結論付けた。我々は、TMEM16Fが血液凝固に異常をきたすScott症候群の原因遺伝子であることを見出しているが、最近、TMEM16CがCraniocervical Dystoniaの原因遺伝子であることが報告された。TMEM16Fはほとんど全ての組織に発現しているが、TMEM16Cは脳にしか発現していない。以上の結果は、リン脂質のスクランブル活性が血液系の細胞だけではなく、神経系の細胞の機能においても重要であることを示唆している。
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