研究課題/領域番号 |
24790284
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
水谷 清人 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 特命助教 (50559177)
|
キーワード | Necl / ヘミデスモソーム / インテグリン |
研究概要 |
ヘミデスモソームは、正常上皮細胞の細胞膜上に斑点状に散在する細胞-基質間接着構造である。細胞-基質間接着は細胞が周辺環境を認識するうえで重要であり生理的には細胞の形態維持、細胞分化、細胞機能制御などに関与している。一方、がん細胞では細胞-基質間接着が破壊されて接着能が低下するとともに運動能が亢進し、浸潤・転移する。このような観点から、細胞-基質間接着の制御機構を解明することは生物学的にも医学的にも極めて重要である。前年度の研究において、がん抑制因子のネクチン様分子-4(Necl-4)がErbB2/ErbB3シグナル伝達の活性化を抑制し、TPA刺激依存的なヘミデスモソームの崩壊を抑制することで、がん抑制因子として機能することを解明し、論文発表を行った。本年度は、正常上皮組織におけるヘミデスモソームの形成、維持機構に果たすNeclの機能解明を目的として、ヘミデスモソームが存在する組織、器官におけるNeclファミリー分子(Necl-1, -2, -3, -4, -5)の局在を蛍光免疫組織染色によって検討した。その結果、様々な組織、器官で各Neclファミリー分子が特徴的な細胞内局在を示すことを見出した。また、そのような組織を用いた三次元器官培養の実験系の確立に着手し、条件検討などを経て実験系が確立されつつある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヘミデスモソームが存在する組織、器官におけるNeclファミリー分子(Necl-1, -2, -3, -4, -5)の局在を蛍光免疫組織染色によって検討した結果、様々な組織、器官で各Neclファミリー分子が特徴的な細胞内局在を示すことが見出された。また、三次元器官培養の実験系が確立されつつある。これらの点は、当初の研究目的で挙げた、正常上皮細胞におけるヘミデスモソームの崩壊・再形成機構の解明につながると考えている。また、Neclファミリー分子が細胞の分化を制御している可能性を示唆するデータが得られており、今後の発展が期待できると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度に得られた知見をさらに詳細に検討し、論文発表を行う予定である。特に、生体に近い環境における細胞-基質間接着機構の解明を目指し、Neclファミリー分子が制御するヘミデスモソームの崩壊・再形成機構が、どのように細胞の分化を制御しうるかという点まで解析する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画のうち「正常上皮細胞におけるヘミデスモソーム崩壊・再形成機構」で予定していた、培養細胞と組織培養の実験の条件検討を継続中であり、その系を用いた実験が完了しておらず、消耗品費、論文投稿量、学会発表の旅費などの一部が執行できなかったため。 次年度には、研究課題を完遂するための消耗品費、研究成果を発表するための論文投稿料および学会発表のための旅費として、未使用額を執行する予定である。
|