研究課題/領域番号 |
24790291
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
平居 貴生 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (80389072)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 生体分子 |
研究概要 |
骨軟骨組織では、副甲状腺ホルモン関連ペプチド(Parathyroid hormone related peptide;PTHrP)はPTH/PTHrP受容体(PPR)に結合して、軟骨の増殖と軟骨肥大分化に重要であることが、PTHrPおよびPPR KOマウスの解析から明らかにされた。また、PPRシグナリングが軟骨内骨化課程において重要な役割を果たしていること、PPRタンパク質が関節軟骨に発現してる等の観察から、関節軟骨において細胞未分化維持制御機構にPPRシグナリングが関与している可能性が強く推察される。以上のような所見から、関節軟骨における機能的PPRシグナリングの役割の理解、細胞未分化維持機構におけるPPRシグナリングの関与の可能性について検討することを、本研究目的とした。関節軟骨におけるPPRの正常な機能の理解、PPRの新規機能などを明らかにするためにはシンプルな遺伝子破壊だけでなく、組織特異的・誘導的遺伝子標的実験などによるより高度な遺伝学的手法、すなわち異なった視点からのより複合的なアプローチによる解析が重要であると考えられる。そこで、関節組織における標的分子の新規機能の解析を目的に、関節軟骨特異的Creリコンビナーゼ発現トランスジェニックマウス(Tg)を作出を目指した。また、静止軟骨における細胞未分化維持機構、PPRシグナリングの標的分子の同定との機能解析のために、三次元軟骨スフェロイド法の確立とPPRシグナリングの標的分子の探索をおこなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度では、OA発症メカニズムの解析を目的としたモデルマウスの確立を目指した。現在、GDF5プロモーターの下流にテトラサイクリン制御性トランス活性化因子(tTA)、テトラサイクリン応答配列(TRE)、Creリコンビナーゼ(Cre)遺伝子を挿入したTgマウス(GDF5-tTA::TRE-Cre Tgマウス)のF1マウス作製中であり予定より遅れている。したがって、動物モデルを用いた関節組織のおけるPPRの機能解析も予定より遅れている。しかしながら、補完的なアプローチとして予定していた、【In vitro軟骨スフェロイド培養法を用いた細胞分化調節機構の解析】に関しては、本年度の予定通り、三次元スフェロイド培養法の成熟がみられた。具体的には、軟骨細胞塊(スフェア)を形成させ、マウス関節軟骨組織から得られた細胞をPKH26色素で染色し、その後浮遊培養で軟骨スフェアを形成させる方法であるが、次年度以降の解析に有用な結果が得られた。また、定量リアルタイムPCR法を用いた解析によって、関節軟骨細胞におけるPPRシグナルの標的分子を明らかにすることができた。現在、こらら標的分子の機能解析を新たに計画中である。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の研究計画であるが、24年度に続き、GDF5-tTA::TRE-Creマウスの解析を進める。現在、GDF5-tTA::TRE-Cre TgマウスのF1マウス作製中であり、予定よりやや遅れている。したがって、今後は本計画の推進を目指す。具体的には、GDF5-tTA::TRE-Cre;R26R-EGFPマウスを作製した後、GFPタンパク質の発現を蛍光顕微鏡を用いて可視化することによって、Creの発現をモニターする。また、GDF5-tTA::TRE-Cre;PPRflox/floxの解析は、PPRが関節組織において機能的な役割を果たしうるかを直接的に明らかにする最も有効なアプローチであると推察される。よって、GDF5-tTA::TRE-Cre;PPRflox/floxの解析も順次進めたい。具体的には、凍結切片またはパラフィン切片標本を用意し、それらを用いてin situ ハイブリダイゼーション法を行い、分化マーカー(Collagen X, Osteopontin, MMP13, ADAMTS5など)の局在・発現レベルの確認を行う。さらに、分化マーカーの発現変動、アポトーシスの検出等、関節軟骨組織を中心とした詳細な個体異常の観察と細胞生物学的解析を進める。また、本研究目的達成のために、これらに実験計画に加え、次年度以降に新たな実験を計画する必要がある。具体的には、siRNAを用いて関節軟骨細胞でのPPRの発現低下モデルを作製し、これらの細胞について、BrdUアッセイによる細胞周期速度の測定、分化マーカーの発現変動、アポトーシスの検出等、細胞生物学的解析を行うことによって、細胞レベルにおいてもPPRの新規機能を明らかにすることを目指す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本実験計画の達成のために、効率よく計画的に研究費を使用する。本研究施設や設備について、基本的な生化学・分子生物学的実験の環境は整っており、これらの実験手技に関しては新たに実験備品を購入する必要はない。経費の主要な用途は消耗品であり、マウス飼育関連支出、分子生物学実験試薬に使用する。
|