研究課題/領域番号 |
24790291
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
平居 貴生 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (80389072)
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キーワード | 生体分子 |
研究概要 |
軟骨組織では、副甲状腺関連ペプチド(Parathyroid hormone related peptide; PTHrP)はPTH/PTHrP受容体に結合して、軟骨細胞増殖・肥大化を制御している。本研究では、静止軟骨細胞におけるPTHrPの役割と未分化維持機構におけるPTH/PTHrP受容体シグナルの関与の可能性について検討することを目的とした。PTH/PTHrP受容体シグナルの標的分子の探索とその機能解析のために、酵素処理法によって軟骨細胞の培養を試みた。すなわち、マウス関節部位を摘出後、0.3%コラゲナーゼIIIを用いて16時間処理後、細胞を分散し、DMEM/10%FCSを用いて培養した。軟骨細胞を培養後、PTHrP刺激をおこない、刺激後1時間から8時間目までのtotal RNAを回収し目的遺伝子の変動をマイクロアレイ法、リアルタイムPCR法を用いて解析した結果、PTHrP(1 nM)刺激後1時間目から転写因子Nuclear Factor, Interleukin 3 Regulated/ E4 Promoter-Binding Protein(Nfil3/E4BP4)mRNAが有意に増加することが明らかとなった。近年、転写因子Nfil3/E4BP4は時計遺伝子として同定され、時計遺伝子Per2を抑制して概日時計の時刻合わせをする重要な因子であることが明らかになっている。また、Nfil3/E4BP4は骨髄由来NK細胞の分化決定に必須な転写因子であることが報告されているが、これまでの研究成果において転写因子Nfil3/E4BP4が骨関連因子BMP4のプロモーター上に結合しBMP4遺伝子の発現を負に制御することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は、PTH/PTHrP受容体シグナルの標的分子の探索において進展があった。特に、PTHrP(1 nM)刺激によって誘導される転写因子Nfil3/E4BP4に着目した結果、骨組織におけるNfil3/E4BP4の機能的役割の一端を明らかにすることができた。すなわち、時計遺伝子Nfil3は骨関連因子BMP4のプロモーター上に結合しBMP4の発現を負に制御することを明らかにした。一方、これまでの研究成果で、PTH/PTHrP受容体シグナルは静止軟骨細胞の未分化維持に関与していることを報告したが、補完的なアプローチとして予定していた【軟骨スフェロイド培養法】を用いたPTH/PTHrP受容体シグナルの解析に関しては予定より遅れている。特に、静止軟骨細胞が三次元スフェロイド培養法によって細胞塊を形成するが、これら細胞塊が幹細胞としての特徴を有するかについて現在解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果において、転写因子Nfil3/E4BP4が骨関連因子BMP4のプロモーター上に結合しBMP4の発現を負に制御することを明らかにした。一方、軟骨細胞に対するPTHrP刺激によって、ADAMTS5 mRNAの有意な減少を確認している。また、転写因子Nfil3/E4BP4は標的遺伝子のプロモーター上に結合し、標的遺伝子の発現を負に制御することが知られているが、今後はPTHrP刺激によって発現するNfil3/E4BP4がADAMTS5遺伝子発現を直接制御するか否かについて詳細に検討する予定である。ADAMTS5は変形性関節症や関節炎における関節破壊に中心的な役割を担っていることがADAMTS-5ノックアウトマウスを用いた実験で証明されているが、その制御機構については不明な点が多く残されている。すなわち、PTH/PTHrP受容体シグナルによるADAMTS-5遺伝子の制御機構を明らかにすることよって、PTHrPの生理的意義あるいはPTH/PTHrP受容体シグナルの新規機能について明らかにすることを目指す。 近年、Per2-lucマウスより摘出した骨標本を培養した場合、24時間のリズミックな発光を示すなど、時計遺伝子による軟骨代謝の制御の可能性が示唆されている。また、本研究成果においても、PTH/PTHrP受容体シグナルによって時計遺伝子Nfil3の発現が制御されている可能性が示唆されたので、PTH/PTHrP受容体シグナルによって制御される「概日時計」と骨軟骨代謝との関わりについて新たに検討する予定である。これらの実験計画に加え、PTHrP刺激によって変動する遺伝子群のなかで、生理的に意義深い分子に関しては、細胞生物学的解析によって、さらに詳細に解析していく予定である。
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