研究課題
胎児期の器官形成は、隣接する器官群が相互に影響を及ぼしあいながら進んでいく。しかし、その発生現象の複雑さからこのような観点での発生メカニズム解析は殆ど進んでおらず、器官群がどのように関連しているか等を示した知見は少ない。本研究の目的は、胎児後部領域に位置する泌尿生殖系器官群、それらを取り巻く腹壁や骨盤に注目し、器官形成において細胞の移動、血管走行や神経走行が果たす役割を明らかにすることである。平成26年度に得られた結果として、遺伝学的細胞系譜解析、またBrdUパルスチェイス解析から胎齢9.5日の総排泄腔上皮、胎齢11.5日の尿生殖洞・後腸上皮において、背側-腹側で性質に違いがある可能性を示唆した。また、総排泄腔分割異常を呈する遺伝子改変マウスにおける血管走行、神経走行を可視化した結果、早期血管形成不全による虚血による器官形成異常ではないことを示唆した。研究期間全体を通しての結果を総括すると、臍帯下部領域から外生殖器上部領域への細胞移動現象の存在を器官培養系を用いた組織標識実験により示唆した。この細胞移動過程に異常を呈するAlx4遺伝子変異マウスにおける臍帯下部領域の遺伝子発現を解析した結果、Ap2alpha、Pitx1、Mab21l2といった腹壁形成に重要であると考えられる遺伝子群の発現が低下していた。また、Alx4・Shh・Gli3複合遺伝子改変マウスの解析から、細胞増殖因子ヘッジホッグ(Hh)シグナルが胎児後部領域器官群の異常に関連する事を示した。さらに、Hhシグナル機能獲得型変異マウスを作製した結果、Hhシグナルが過剰に導入されることが腹壁部の異常と外生殖器背側の低形成につながる可能性を示唆した。これらの結果は、臍帯下部領域が胎児後部器官群に細胞を供給することによって外生殖器や膀胱、腹壁といった広範囲の協調的器官形成に寄与している可能性を示唆した。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件)
Cell Death & Differentiation
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