研究概要 |
腎臓におけるタンパク質の再吸収は、エンドサイトーシス受容体メガリンを中心的機能分子として制御されている。しかし、メガリンの発現や機能制御には、メガリンの細胞質領域で相互作用するアダプター分子が必須である。このようなアダプター分子が欠けると、エンドサイトーシス不全に陥り、やがて慢性腎不全となり、透析を余儀なくされる。研究代表者は、メガリンの発現、機能制御に必要な細胞質領域におけるタンパク質相互作用に着目し、質量分析を用い、アダプター分子の候補を新たに4種類のタンパク質 (A, L, N, S) を同定した。これらのうち、L, N, Sの3種類は、未だ明確な細胞内局在や生理機能が報告されていない分子である。 はじめに、メガリンの細胞質領域とアダプター候補分子との相互作用を検証するため、ビオチン化メガリン細胞質領域およびアダプター候補分子 (LまたはS) の3xFLAGタグ融合タンパク質をブタ近位尿細管細胞LLC-PK1細胞に共発現させ、ストレプトアビジンビーズによる共免疫沈降を行った。この際、C末端側に3xFLAGタグを含むアダプター候補分子よりもN末端側にタグを含む融合タンパク質として発現させた方が、L, Sいずれの場合も共沈する効率が高かった。このことから、いずれの相互作用分子も、よりC末端側に近い領域でメガリン細胞質領域と相互作用することが示唆された。 また、正常マウス腎臓におけるL, Sの発現と細胞内局在を検証するため、マウス腎臓のホモジェネートについて密度勾配遠心分離を行った。Lは初期エンドソーム、Sはリサイクリングエンドソームの含まれるフラクションに、それぞれメガリンとともに濃縮されるという結果が得られた。このことから、Lはメガリンの初期エンドソームへの輸送に、Sはリサイクリングエンドソームから細胞膜へのリサイクリングに関与する可能性が見出された。
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