研究課題/領域番号 |
24790295
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
中村 由和 東京薬科大学, 生命科学部, 講師 (60366416)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ホスホリパーゼC / 皮膚 |
研究概要 |
当該年度はメラノーマ細胞株を表皮特異的にPLCδ1を欠損したマウス(PLCδ1cKOマウス)に移植した際の転移能の変化について検討することを計画していた。計画に従い、側背部皮膚内へメラノーマ細胞株B16-F10細胞を移植したところ、PLCδ1cKOマウスでは所属リンパ節にB16-F10細胞の転移が観察された。これに対し、コントロールマウスでは所属リンパ節へのメラノーマ転移は組織学的解析およびメラノーママーカーの発現解析のいずれによっても全く観察されなかった。このことから、表皮におけるPLCδ1の欠損は皮内に移植されたメラノーマの転移を促進することが強く示唆された。また、正常マウスの皮膚内にB16メラノーマを移植し、腫瘍を形成させた後、癌組織周囲のケラチノサイトにおけるPLCδ1の発現をウエスタンブロッティング、免疫組織染色、in situハイブリダイゼーションにより検討することも計画していた。本計画に関してはウエスタンブロッティングによってB16メラノーマを移植されたマウスの皮膚におけるPLCδ1の発現を検討したところ、B16メラノーマを移植された皮膚ではPLCδ1の発現が低下する傾向が見られた。さらにB16メラノーマを移植した皮膚の腫瘍間質部位とPLCδ1cKOマウスの皮膚の間質部位の遺伝子発現を網羅的に解析することを計画しており、こちらに関しては現在、間質細胞のみを高純度で得ることができる条件を検討中である。また網羅的発現解析とは別に、癌間質で発現亢進しているとの報告があるIL-23、IL-17の発現についての解析を行ったところ、これらの遺伝子がPLCδ1cKOマウスの皮膚においても増加していることが判明し、この点に関しても解析を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メラノーマ細胞株を表皮特異的にPLCδ1を欠損したマウス(PLCδ1cKOマウス)に移植した際の転移能の変化についての検討および正常マウスの皮膚内にB16メラノーマを移植し形成させた癌組織周囲のケラチノサイトにおけるPLCδ1の発現解析はほぼ計画通りに進展している。また皮膚の腫瘍間質部位とPLCδ1cKOマウスの皮膚の間質部位の遺伝子発現の網羅的比較に関しては技術的に困難な点が有り条件検討中であるが、この過程でIL-17やIL-23といった腫瘍間質で増加が見られるとの報告が有る遺伝子がPLCδ1cKOマウスの皮膚でも増加していることを見出すことができた。以上より、現在までの達成度としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
生体内での皮膚環境を再現するためにケラチノサイト、線維芽細胞、癌細胞を用い異種細胞共存皮膚三次元培養を行う。具体的には、真皮線維芽細胞を含むコラーゲンゲル上にてコントロールおよびPLCδ1の発現抑制を行ったケラチノサイトを培養し、三次元培養系にて表皮層構造の形成を行う。この際、癌細胞をケラチノサイトとともにコラーゲンゲル上に播種し、増殖やコラーゲンゲル中への浸潤を検討する。コントロールケラチノサイトと比べ、PLCδ1の発現抑制を行ったケラチノサイトを用いた場合に癌細胞の増速や浸潤が亢進するか否かを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
異種細胞共存皮膚三次元培養を行うにあたり初代培養ケラチノサイト、初代培養皮膚線維芽細胞が必要となる。これらの細胞は株化されていないため、継続的に購入または調製する必要がある。また、初代培養ケラチノサイトの重層化を促す三次元培養用培地やコラーゲンゲル、マトリゲル、細胞培養用インサートなども年度内を通し必要となる。以上より、細胞培養関連試薬に費用を使用する計画である。さらに本研究成果の学会および学術誌での発表も目指すためそれらの費用としても使用する計画である。
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