研究課題
表皮特異的にホスホリパーゼCを欠損したマウス(PLCδ1cKOマウス)の皮膚では特定のサイトカインの発現増加、血管形成の亢進など、腫瘍組織間質と一部類似した現象が見られていたため、前年度の解析においてPLCδ1cKOマウスの皮膚へのB16-F10メラノーマ移植実験を行い、PLCδ1cKOマウスの皮膚では正常マウスと比べ腫瘍サイズが大きくなることやB16-F10の所属リンパ節転移が見られることを確認していた。当該年度はPLCδ1cKOマウスの皮膚の遺伝子発現解析を行ったところ、PLCδ1cKOマウスの表皮ではNotch1やその標的遺伝子群の発現が低下していることが判明した。表皮特異的にNotch1を欠損したマウスの皮膚は腫瘍組織間質と類似した環境になっていることが既に報告されているため、表皮におけるPLCδ1の欠損はNotch1の発現を低下させることにより腫瘍組織間質と類似した皮膚環境を誘導している可能性が考えられた。また以前の研究において、PLCδ1がNotch1の発現誘導を介して毛の形成を制御していることは見出していたが、本研究により毛包以外の表皮においてもPLCδ1はNotch1やその下流遺伝子群の発現を制御していることも明らかになった。腫瘍組織は創傷治癒過程の組織と類似性が高いことが知られており、実際に、PLCδ1cKOマウスや前述の表皮特異的Notch1欠損マウスの皮膚は、組織学的観点や遺伝子発現の面からも創傷治癒過程の皮膚環境に類似している。そこで、PLCδ1cKOマウスの創傷治癒速度についても検討を行ったところ、正常マウスと比較し創傷治癒速度が亢進していることが明らかになった。
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