研究課題
{背景・目的}βカテニンは転写因子であり、血管内皮特異的に欠損、または活性化させたマウスは、胎生期において血管形成異常により致死となる。この結果は、血管内皮におけるβカテニンの転写活性は厳密に制御されていることを示しているが、詳細な機序はいまだ不明である。ゼブラフィッシュを用いて、血管新生時おけるβカテニンの転写活性を血管内皮特異的に解析する。どの時期に、どの細胞で活性化が起こり、どのようにして活性化を誘導し、どのような機能をしているのか明らかにする。{成果}βカテニンの転写活性変化を明らかにするために、βカテニンの活性をモニターするゼブラフィッシュを作製し、観察した。その結果、尾部静脈叢に強いGFPの蛍光を検出した。更に、血管内皮特異的にβカテニンの転写活性を抑制し、形態に与える影響を解析した結果、尾部静脈叢特異的に細胞死が誘導され、形態の異常が認められた。この事から、βカテニンの転写能は、尾部静脈叢形成に必須であることが明らかとなった。尾部静脈叢のβカテニン転写活性能は、どのような分子を介して活性化され、どのような機能を持っているのか明らかにするために、遺伝子発現プロファイルの変化を解析した。その結果、AGGF1・Nr2f2がβカテニン転写活性と高い相関を示した。AGGF1の発現抑制を行ったゼブラフィッシュでは、βカテニン転写活性の減少が認められたことより、AGGF1がβカテニン転写活性能を制御していることが示唆された。また、人工的にβカテニンを活性化するとNr2f2の発現は尾部静脈叢において上昇した。これらの結果より、Nr2f2の発現がβカテニン依存的であることが示唆された。以上の結果より、βカテニンは尾部静脈叢形成時に活性化されており、その機能は静脈の分化・生存に関与していることが明らかとなった。
すべて 2015
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Development.
巻: 142(3) ページ: 497-509.
10.1242/dev.115576