研究課題
門脈塞栓術は、肝細胞がんや胆道がんなどの拡大肝葉切除手術の術前処置として施行される。門脈塞栓では、塞栓肝が萎縮する一方で、非塞栓肝の肥大をもたらし、肝機能を亢進することで術後の肝不全を予防することができる。すでに臨床応用されている手技にもかかわらず、門脈塞栓による肝肥大の分子メカニズムは分かっていない。Nrf2は、酸化ストレスに対する生体防御系酵素群の発現制御にはたらく転写因子である。通常時は、Keap1により細胞質に捕捉され、ユビキチン-プロテアソーム系によって速やかに分解される。活性酸素種などに曝露されるとKeap1とNrf2の結合が減弱するため、分解を免れたNrf2が核へ移行・蓄積して、標的遺伝子群の発現を誘導する。我々は最近、Nrf2がグルコースやグルタミン代謝に関わる酵素群を標的遺伝子として、細胞の増殖に寄与することが明らかしている。門脈塞栓による非塞栓肝の肥大をもたらす分子メカニズムを明らかとするため、ヒト門脈塞栓術の代用としてマウス門脈枝結紮モデルを作製した。そして、門脈枝結紮をNrf2欠損マウス、およびNrf2が恒常的に活性化した肝臓特異的Keap1欠損マウスに施行することにより、Nrf2が門脈枝結紮による肝肥大に関与するか否かを調べた。その結果、非結紮肝の肥大はNrf2に依存することが示された。この肥大が肝細胞の肥大によるものか、増殖によるものかについて現在調べている。
2: おおむね順調に進展している
Nrf2欠損マウスおよび肝臓特異的Keap1欠損マウスの繁殖を順調に行い、門脈枝結紮を施行するマウスの供給ができた。門脈枝結紮の手技を安定して施行することができるようになり、予定通り非結紮肝および結紮肝のサンプリング・解析を行った。
非結紮肝の肝肥大の分子メカニズムを明らかとするため、非結紮肝を用いたメタボローム解析、および遺伝子・タンパク質発現解析を行う。
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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