研究課題
肝臓がんでは外科的な肝切除が有効な治療として採用されるが、広範囲におよぶ肝切除は術後に肝不全をもたらす場合があり、在院死の原因となっている。このような術後の肝不全を予防する目的で、肝切除前に門脈塞栓術が施行される。肝臓に酸素や栄養を運搬する門脈を塞栓すると、非塞栓肝が肥大して肝機能を亢進する。門脈塞栓は30年以上も臨床で利用されている手術にもかかわらず、門脈塞栓により非塞栓肝が肥大する分子メカニズムはこれまで明らかとされていなかった。そこで、増殖に関与することが最近分かってきた転写因子Nrf2に着目し、Nrf2が肝肥大をもたらす分子であるという仮説の元に実験を行った。門脈塞栓の代替として門脈枝結紮モデルをNrf2活性化の程度が異なる3種のマウス(Nrf2欠損マウス、野生型マウス、肝臓特異的Keap1欠損マウス)に施行した。その結果、Nrf2が活性化していると門脈枝結紮後に著しく肝肥大が亢進することが分かった。この肝肥大の亢進は、肝細胞の増殖の持続が関与していた。また、Nrf2活性化に関与する増殖シグナルであるPI3K-Aktの活性化が認められた。さらに、Nrf2活性化剤の投与により、門脈枝結紮時の肝肥大が亢進することを明らかとした。この結果は、門脈塞栓にNrf2活性化剤を併用することにより、肝切除前により安定した肝肥大をもたらすことを示している。よって、Nrf2活性化剤を臨床に応用するために基礎的な知見を得ることができたと考えている。以上の結果は、Shirasaki et al. (2014) Hepatologyに報告した。
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Hepatology
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