研究課題
平成27年度は、以下の解析を行った。【核外輸送が抑制されているタンパク質の同定】 血球分化の抑制が起きているset-nup214トランスジェニックマウスの脾臓細胞を用い、核への蓄積が見られるタンパク質の同定を試みた。その結果、IκBαに加え、リボソームの核外輸送を担うNMD3の核への蓄積が観察された。【核外輸送が抑制されているタンパク質が細胞に及ぼす影響の解析】 SET-NUP214に加え、DEK-NUP214発現細胞でもNMD3の核への蓄積が観察された。また、両融合遺伝子産物発現細胞では、60Sサブユニットに含まれるRNAの細胞内局在が変化していることが明らかとなり、NMD3機能が阻害を受けている可能性が示唆された。研究期間全体を通じ、①白血病でみられる融合遺伝子産物SET-NUP214およびDEK-NUP214が細胞内において複数の核―細胞質間輸送因子と結合し、その機能に影響を及ぼすこと、②両融合遺伝子産物が内在性の生体高分子の核外輸送を阻害すること、③そのことにより、細胞での遺伝子発現の変調を引き起こすことを明らかにした。細胞内の輸送異常が細胞のがん化を引き起こす可能性を提案する分子基盤を明らかにした点が本研究の意義である。細胞内の輸送異常がどのように細胞のがん化を引き起こすかその詳細な機構を明らかにすることが今後の課題である。本研究で得られた成果については、現在論文作成中である。
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Proc Natl Acad Sci U S A.
巻: 111 ページ: 9828-33
10.1073/pnas.1320474111