研究課題/領域番号 |
24790310
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
櫻井 美佳 東京大学, 医科学研究所, 助教 (80508359)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 生体イメージング / 細胞浸潤 / ATL / CADM1 |
研究概要 |
1)上皮細胞由来のがんにおけるCADM1と下流分子群の生体内での動態と役割の解明 まず初めに、多光子レーザー顕微鏡を用いた生体蛍光観察(Intravital imaging)系の構築を試みた。倒立および正立顕微鏡に多光子レーザーを搭載したシステムを使用し、GFP発現トランスジェニックマウスを麻酔下にて開腹し、肝臓、脾臓、小腸など様々な臓器の観察を行った。臓器により、倒立あるいは正立顕微鏡による観察に適していることが分かった。さらにTexaRedデキストランを尾静脈より導入し同時に血管の可視化を行った。次に、Cadm1欠損マウスの肺腫瘍より樹立された高浸潤性のIMSMP-1細胞にGFPを発現させたクローンをヌードマウスの皮下に移植し、数週間維持し腫瘍を形成させた。解剖により、この皮下腫瘍の周辺には多くの血管が観察され、腫瘍の血管への浸潤が予測された。 2)ATL細胞の浸潤におけるCADM1と下流分子群の生体内での動態と役割の解明 ATL細胞株はヒト由来であり、これまでマウスへの移植実験は困難であり、数例の報告しか存在しない。そこで我々の研究室で保有するATL細胞株を免疫不全のNOD/SCIDあるいは NOGマウスへ投与し、ヒトのATLの特徴である皮膚や多臓器への浸潤と腫瘤形成を示すマウスモデルの構築を試みた。ATLの浸潤性を解剖により評価したところ、MT-2細胞をNOGマウスの尾静脈へ移植した場合において、肝臓への著しい転移が観察された。さらにCADM1に対するshRNA発現ベクターを構築しGFP発現ベクターとともにMT-2細胞に導入し、MT-2/shCADM1/GFP発現クローンを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)上皮細胞由来のがんにおけるCADM1と下流分子群の生体内での動態と役割の解明 マウスを麻酔下で維持し、生体イメージングを行うのは容易ではなく、当初の予定よりはシステムの構築に時間がかかったが、最終的に可能になり順調に進んでいると考えられる。 2)ATL細胞の浸潤におけるCADM1と下流分子群の生体内での動態と役割の解明 これまでにヒトATL細胞を用いたマウスへの移植実験は、報告が少なく系の樹立が困難と考えられた。しかしNK細胞を含む免疫系を持たないNOGマウスの尾静脈への移植により転移モデルを構築することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1)上皮細胞由来のがんにおけるCADM1と下流分子群の生体内での動態と役割の解明 引き続き多光子顕微鏡による生体イメージング系の最適化を行う。またIMSMP-1/GFP細胞をヌードマウス皮下に移植した腫瘍を用いて、生体イメージングによる観察を行い、血管への浸潤および血管内における腫瘍の運動を詳細に観察する予定である。 2)ATL細胞の浸潤におけるCADM1と下流分子群の生体内での動態と役割の解明 まず今年度に樹立したMT-2細胞にCADM1 shRNAおよびGFPを発現するクローンをNOGマウスに移植し、肝臓への腫瘍の転移能をコントロール細胞と比較する。さらにCADM1の発現の有無が転移に及ぼす影響を詳細に観察するため、この系においても生体イメージングを試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養、実験動物、抗体、プラスチック器具などの消耗品に用いる。さらに国内および海外の学会における成果発表に使用する。
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