研究課題/領域番号 |
24790310
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
櫻井 美佳 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 助教 (80508359)
|
キーワード | CADM1 / がん / ATL / 細胞浸潤 / 多光子励起顕微鏡 / 生体イメージング |
研究概要 |
1)上皮細胞由来のがんにおけるCADM1と下流分子群の生体内での動態と役割の解明 昨年度に構築した多光子レーザー顕微鏡を用いた生体蛍光観察(Intravital imaging)系により、Cadm1欠損マウス肺腫瘍由来IMSMP-1細胞に恒常的にGFPを発現させ、皮下腫瘍の観察を行った。またTexasRedデキストラン導入による血管の可視化により腫瘍周辺の血管新生の亢進が観察されたが、血管内に浸潤する細胞を観察することは困難であった。そこで次に、この細胞をヌードマウスの脾臓に投与し、1日後に肝臓に転移した細胞を観察すると、血管内および組織内に漏出した細胞が検出された。IMSMP-1細胞の高浸潤性という特徴を生かし、浸潤過程のタイムラプス観察を行うことができた。 2)ATL細胞の浸潤におけるCADM1と下流分子群の生体内での動態と役割の解明 昨年度までに、ATL関連細胞株(MT-2)を免疫不全NOGマウスの尾静脈に投与し、ヒトATLの特徴である多臓器浸潤を示すマウスモデルを構築した。この細胞の浸潤におけるCADM1の役割を調べる目的で、CADM1 の発現をshRNAにより恒常的に抑制し、かつGFPを発現するMT-2/shCADM1/GFP細胞株を得た。この細胞株は、shControl導入細胞株と比較して、in vitroにおける増殖能には変化がないが、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)への接着能が有意に低下していた。そこで、これらの細胞株をNOGマウスに投与し浸潤性を調べたところ、shCADM1導入細胞株では肝臓における腫瘍結節数およびその血管内に存在する腫瘍細胞数の低下が見られた。現在、これらの細胞株の肝臓における浸潤過程を長時間に渡り観察することができるよう、その方法の改良を試みている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス肺がん由来細胞IMSMP-1は高浸潤性のため、皮下投与から短期間で腫瘍が形成され、イメージング系の確立が早期にできた。また転移した腫瘍細胞の観察においては、肝臓を露出した状態で観察を行うため、長時間行うことが困難であったが、現在までにヌードマウスを用いて数時間の観察に耐えられる系を確立することができた。またNOGマウスを用いたATLの生体浸潤モデルを構築し、さらにCADM1の恒常的な発現抑制が浸潤に及ぼす影響を予定通りに解析することができたことから、おおむね順調に進んでいると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに肝臓の生体イメージング系を確立し、またATL細胞において、CADM1の発現を抑制することが生体内の浸潤を抑制することが示された。最終年度は、両者を組み合わせ、肝臓の生体イメージング系を用いたATLの浸潤における細胞接着・運動そして浸潤過程の詳細な観察を行うことを目標とする。まずヌードマウスに比べて弱いNOGマウスを用いた肝臓の生体イメージング系を最適化する。次にshControlおよびshCADM1導入MT-2細胞の、NOGマウスにおける浸潤機構を比較することで、CADM1を介したATLの生体内の浸潤機構を解明する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
生体イメージング系の最適化の部分で使用する物品が、当初の予定より少なく済んだため本年度の使用額が減少した。 引き続き研究を遂行するため細胞培養関連物品、実験用動物(マウス)などの購入に充てる。また最終年度のため論文発表に向けた英語論文校閲費、印刷費・研究成果投稿料などにも使用する。
|