Periplakinは細胞接着複合体や細胞骨格分子を互いに接続することにより,組織や細胞に構造的強度を付与する,サイトリンカーであると考えられている.しかしながら,細胞膜に局在する受容体や,細胞内のリン酸化酵素等との,直接的な結合も報告されていることから,単なる構造分子としての働きを超えた,多機能性分子である可能性が示唆されている.我々はPeriplakinの発現が胆汁鬱滞や尿鬱滞といった体液鬱滞によって著しく亢進することを見出し,Periplakinが体液鬱滞によるストレス環境下で生体恒常性維持に寄与する可能性を示した.さらに,生体内でのPeriplakinの実際の作用点を同定することを狙いとし,periplakinノックアウトマウスの表現型解析や,Periplakin結合タンパク質の網羅的同定を進めた.これまでにPeriplakin結合タンパク質として複数の分子を同定した.また,periplakinノックアウトマウスと野生型マウスの肝臓で発現量が異なる分子を見出したが,これらの変化は飼育環境や戻し交配の程度の影響を強く受ける不安定なものであった.一方で,periplakinノックアウトマウスに胆汁鬱滞とは直接関係がない,絶食ストレスを与えたところ,24時間の絶食時に血糖値が同性同腹仔の野生型マウスに比べて常に低値となる,大変興味深い表現型を見出した.Periplakinが胆汁鬱滞ストレス下で果たす役割は限定的であるか,他分子により代償的に補完され得る可能性が高いが,これとは別に,同分子が絶食時の糖代謝において重要な役割を持つ可能性が示唆された.
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