研究課題
Hippo経路は器官のサイズを規程する経路として、ストレス応答を制御する経路として、またがん抑制経路として注目されつつある。本研究ではHippo経路の主要構成因子のひとつであり、ヒト腫瘍において高頻度に異常が報告されているMob1A/Mob1B遺伝子に注目し、Mob1A/1Bの個体発生・分化制御機構やその異常による病態の有無を解明するため、全身性にMob1A/1B欠損するマウスを作製・解析した。Mob1A/1Bダブルホモ欠損マウスは着床直後に胎生致死となることからMob1A/1Bが個体発生に重要であること、Mob1A/1B部分欠損マウスでは、全例に様々な腫瘍形成を認めることから、Mob1A/1Bががん抑制遺伝子であることを報告した。Mob1A/1B部分欠損マウスでは皮膚外毛根鞘がんを全例発症したことから、ケラチノサイト特異的Mob1A/1Bダブルホモ欠損マウスを作製した。Mob1A/1Bダブルホモ欠損ケラチノサイトでは、細胞増殖亢進、細胞死抵抗性、コンタクトインヒビション障害、細胞分裂異常、未分化性の亢進を認め、これらの変化ががん発症の一因であることを示唆した。さらにヒト皮膚外毛根鞘がんサンプルにおいてHippo経路分子の発現を検討し、Mob1を含むHippo経路分子がヒト皮膚外毛根鞘がんの原因遺伝子であることを示した。次に他のHippo経路分子変異マウスにおいて肝がんの報告があること、またMob1A/1B部分欠損マウスを長期観察すると肝がんを発症することから、肝・胆管細胞特異的Mob1A/1Bダブルホモ欠損マウスを作製した。肝臓においてMob1A/1B欠損を欠損すると著しい胆管の増生を認め、離乳期までの生存率は1/3であった。また生存した1/3のマウスでは高頻度に胆管がん・肝がんを発症することから、肝臓においても正常な器官形成や腫瘍抑制にMob1A/1Bが重要な役割を担っていることを見出しつつある。これらから、Hippo経路は皮膚外毛根鞘がんを含む種々のがん抑制戦略の重要な標的となることが期待される。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)
NEURO SCIENCE
巻: 258 ページ: 263-9
10.1016/j.neuroscience.2013.11.017. Epub 2013 Nov 16.
CANCER SCIENCE
巻: 104 ページ: 1271-7
10.1111/cas.12227. Epub 2013 Aug 7.