研究課題/領域番号 |
24790321
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中沢 由華 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00533902)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 分子遺伝子診断学 / DNA損傷修復 |
研究概要 |
研究代表者らは昨年、ヌクレオチド除去修復(NER)欠損性疾患である紫外線高感受性症候群(UVSS)の原因遺伝子UVSSAを同定し、機能解析を行った。この過程で、NER関連遺伝子を組込んだレンチウイルスによる相補性試験の系を確立した。本研究では、この技術を応用した迅速な臨床診断法を模索するとともに、新たな原因遺伝子不明のNER欠損性疾患症例を調査/収集し、その責任遺伝子同定と機能解析を行う事を目的とした。 まず、レンチウイルスを用いた相補性試験を臨床診断に応用するため、各種ウイルスの作成、感染の条件検討等を実施し、プロトコール作成に取り組んだ。その結果、既知の遺伝子であれば約1週間で責任遺伝子特定が可能な技法を確立した。実際の診断にあたっては、以下の手順で行うこととした。1)NERは、ゲノム全体で働くNER(GG-NER)と転写と共役して働くNER(TC-NER)に大別されることから、ウイルス非感染状態でGG-NERの活性(UDS)とTC-NERの活性(RRS)を測定し、NERのどの過程に異常が有るかを予測する。2)異常が有ると考えられる過程に関与する遺伝子についてウイルス相補性試験を実施し、責任遺伝子を同定する。既知の遺伝子で相補しなかった検体については、新規責任遺伝子の変異が原因である可能性が高い事から、全エキソームシークエンシングによる探索を行う事とした。これらを実施した結果、これまで責任遺伝子不明あるいは未特定とされていたNER欠損性疾患の色素性乾皮症(XP)及びコケイン症候群(CS)数十症例に関して、既知の遺伝子の変異が原因である事が明らかとなった。さらに、これまでXPの責任遺伝子として知られていたERCC1の異常がCSの発症に関わる事、XPFの異常がXP/CS/ファンコーニ貧血(FA)合併症の原因となる事を突き止めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度において以下の成果があった。 a) UDS/RRS測定法とレンチウイルスを併用した相補性試験の臨床診断への応用を成功させた。b) この新規診断法により、これまで原因遺伝子不明とされていたNER欠損性疾患疑い症例数十検体に関して責任遺伝子が特定された。c) ERCC1の異常が色素性乾皮症(XP)/コケイン症候群(CS)合併症を引き起こす事を突き止めた。d) XPFの機能異常がXP/CS/ファンコーニ貧血(FA)合併症の原因となる事を突き止めた。 このように、当初目的としてあげていたレンチウイルスを用いた相補性試験の臨床診断への応用が達成された他、DNA修復欠損性疾患合併症の新規責任遺伝子の同定にも成功しており、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
24年度の研究が順調であった事から、今後も引き続き同様のウイルス相補性試験を中心とした診断システムを用いて、NER欠損性疾患疑い症例を診断/調査し、新たな責任遺伝子未知の症例を抽出し、全エキソームシークエンシングによる新規DNA修復因子同定及び機能解析を進めたいと考えている。ウイルス相補性試験の系が非常に効率的に機能している事から、siRNAライブラリーを用いた網羅的スクリーニングよりもこちらに重きを置いて、今後の研究も進める事とする。 25年度はこれまで同様、まず、NER欠損性疾患疑い患者由来の線維芽細胞のUDS/RRSをウイルス非感染状態で測定し、異常があると疑われる過程に関与する遺伝子についてウイルス相補性試験を実施する。既知の遺伝子で相補しなかった検体を抽出後、全エキソームシークエンシングによる責任遺伝子探索を行う。 また、24年度の成果によりDNA修復欠損性疾患疑いで責任遺伝子未知の検体を数十例確保しており、現在責任遺伝子同定に向けて解析中である。こちらも引き続き解析を進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
24年度同様、細胞培養用品(培地、抗生物質、プラスチックウェアーなど)やウイルス作成試薬などを購入予定である。本研究は、臨床診断の段階で目的の症例を絞り込む過程が非常に重要である事から、診断に必要な消耗品は、24年度と変わらず十分に確保する事を考えている。 また、候補となった症例の責任遺伝子探索のためのエキソームシークエンシング関連試薬購入にも当研究費を充てる予定である。さらに、エキソームシークエンシングでは、多数の責任遺伝子候補が出て来る事が予想されるため、その後の同定のために用いるsiRNA及びトランスフェクション試薬も購入する。さらに、責任遺伝子同定後は、その機能解析を行うため、細胞生物学的実験に必要な消耗品/試薬類も購入/使用する予定である。 成果報告のための学会参加費及び旅費の支払いも行う予定である。 ただし、本研究費は限られているため、研究の進展具合を見計らいながら予算配分を行う。
|