研究課題/領域番号 |
24790321
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中沢 由華 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (00533902)
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キーワード | 分子遺伝子診断学 / DNA損傷修復 |
研究概要 |
研究代表者らは2012年に、ヌクレオチド除去修復(nucleotide excision repair: NER)欠損性疾患である紫外線高感受性症候群(UV-sensitive syndrome: UVSS)の原因遺伝子UVSSAを同定し機能解析を行った。この過程で、NER関連遺伝子を組込んだレンチウイルスによる相補性試験の系を確立した。本研究では、この技術を応用した迅速な臨床診断法を模索するとともに、新たな原因遺伝子不明のNER欠損性疾患症例を調査/収集し、その責任遺伝子同定と機能解析を行う事を目的とした。NER欠損性疾患には、皮膚がんを好発する色素性乾皮症(xeroderma pigmentosum:XP)や早期老化症状を示すコケイン症候群(Cockayne syndrome: CS)などが含まれるが、現在のところこれらの疾患に対する有効な治療法は無い。しかし、最適な対策(紫外線防護など)をできるだけ早期から開始することで、症状の進行を遅らせる事が可能であり、正確かつ迅速な確定診断は患者や患者家族にとって非常に重要である。 本研究の初年度に確立した、レンチウイルスを用いた相補性試験を応用して、NER欠損性疾患疑い症例の迅速な確定診断を試み、その有用性が示された。また、診断を行う中で、これまでXPの責任遺伝子として知られていたERCC1の異常がCSの発症に関わる事、XPFの異常がXP/CS/ファンコーニ貧血(FA)合併症の原因となる事を突き止めた。さらに、NER欠損性疾患が疑われるものの、既知の疾患責任遺伝子に原因変異が確認されない症例が複数存在した。そこで、現在、これらの検体に関して、エキソームシークエンシングによる責任遺伝子同定を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の結果、NER活性測定法とレンチウイルスを併用した相補性試験の臨床診断への応用を成功させ、これまで原因遺伝子不明とされていたNER欠損性疾患疑い症例に関して責任遺伝子を特定した。その中で、ERCC1の異常が色素性乾皮症(XP)/コケイン症候群(CS)合併症を引き起こす事、XPFの機能異常がXP/CS/ファンコーニ貧血(FA)合併症の原因となる事を突き止めた。さらに、既知の疾患責任遺伝子が原因ではない症例に関して、その新規責任遺伝子を同定するため、現在も解析を続けている。このように、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において、ウイルス相補性試験を中心とした診断システムを用いて、NER欠損性疾患疑い症例を診断/調査し、新たな責任遺伝子未知の症例を抽出した。引き続き、本症例に関して全エキソームシークエンシングによる新規DNA修復因子探索・同定及び機能解析を進めたいと考えている。 また新たに、NER欠損性疾患疑い患者由来の線維芽細胞を100検体調査する予定であり、NERの活性測定及びウイルス相補性試験、全エキソームシークエンシングによる責任遺伝子探索等を順次行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
新規ヌクレオチド除去修復(NER)因子を探索し、候補遺伝子が見つかり次第、順次機能解析を実施する予定であった。しかし、複数の有力な候補遺伝子が思いのほか早く見つかったため、スクリーニングに充てる予定の経費において未使用額が生じた。 有力な候補遺伝子が複数見つかったため、その絞り込み及び各々の機能解析に時間と経費を要している。次年度も解析を続け、その成果を発表する事とし、未使用額はそれらの経費に充てる事としたい。
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