研究課題
若手研究(B)
【結果】当該年度においては計画通り順調に研究を遂行することができた。計画にあるようにIRFファミリー分子欠損マウスにおける単球サブセットの解析を行い、IRF8欠損マウスではGr-1陽性単球亜群が骨髄、末梢血、脾臓において消失していることを見出した。一方で、IRF4欠損マウス及びIRF5欠損マウスでは単球の減少や増加は認められなかった。さらにIRF8欠損マウスの骨髄細胞を放射線照射した野生型マウスに移植することで骨髄キメラマウスを作製し、単球の解析を行ったところ、IRF8欠損マウスの表現型と同様にGr-1陽性単球亜群が消失することがわかった。この結果は、IRF8欠損マウスにおけるGr-1陽性単球の消失は骨髄細胞intrinsicであることを示している。次にIRF8-GFPノックインマウスを用いて造血前駆細胞におけるIRF8の発現を解析した。IRF8の発現は造血幹細胞や共通ミエロイド前駆細胞、顆粒球-単球前駆細胞ではほとんど認められず、単球-樹状細胞前駆細胞(MDP)において急激に増加することがわかった。そこで骨髄よりMDPの単離・精製を行い、野生型マウスに養子移入したところ、骨髄移植のデータと一致してIRF8欠損マウス由来のMDPはGr-1陽性単球をほとんど産生できなかった。【意義・重要性】本研究で初めてIRF8がGr-1陽性単球の分化に必須であることを示した。さらにIRF8はMDPで発現することで単球分化を促進していることを見出した。Gr-1陽性単球は自己免疫疾患やがん等の疾患において、疾患の増悪に関与することが知られている。本研究成果はGr-1陽性単球の分化を制御することで、これらの疾患の新たな治療法を提供する可能性がある点で極めて重要である。
2: おおむね順調に進展している
ほぼ完全に計画に示した研究を遂行することができた。また本研究に関わる研究成果を国内学会(免疫学会、分子生物学会)及び講演(横浜血液集談会)において発表することができた。さらに原著論文としてインパクトファクター9.8点の雑誌に(Blood)本研究に関わる成果を発表することができた。
次年度も計画通りに研究を遂行することが重要である。具体的にはIRF8が制御すると考えられるMDPからのGr-1陽性単球の分化におけるIRF8の役割の解明を引き続き行う。野生型マウスとIRF8欠損マウスのMDPを分離し、マイクロアレイ解析を行うことで、IRF8の欠損がMDPの遺伝子発現に与える影響を調べる。特に遺伝子発現に広範な影響を与えうる転写因子に注目した解析やGene ontology解析を行う。次に当研究室が保有するIRF8欠損マウスの骨髄細胞に由来する前駆細胞株であるTot2細胞にIRF8を導入することで単球への分化を誘導する。IRF8導入初期において変化のある遺伝子をマイクロアレイにより抽出し、IRF8の結合をChIP-seqにより解析する。この手法によりIRF8が単球分化を誘導する際に直接的に結合し制御する遺伝子を絞り込む。このTot2細胞株の結果とMDPのマイクロアレイデータを統合的に解析し、IRF8欠損マウスMDPで変化がありかつIRF8が直接制御する遺伝子を同定する予定である。その分子が単球分化に必須の役割を持っている可能性が高い。
該当なし
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Blood
巻: 121巻 ページ: 1839-1849
10.1182/blood-2012-06-437863
http://www.yokohama-cu.ac.jp/amedrc/res/tamurat2013_01.html