研究課題
単球は生体防御や組織恒常性の維持に必須の免疫細胞であり、骨髄造血幹細胞から単球‐樹状細胞前駆細胞(MDP)を経て産生される。しかし単球の分化・産生が分子レベルでどのように制御されるかその詳細は良くわかっていない。本研究では血球細胞特異的に発現する転写因子であるInterferon regulatory factor-8(IRF8)が単球、特に炎症性単球の分化に必須であることを見出した。IRF8欠損マウスでは炎症性単球が存在せず、IRF8欠損マウスのMDPにおいては単球分化に必須の別の転写因子であるKLF4の発現が著しく減少することがわかった。さらにクロマチン免疫沈降シークエンス(ChIP-seq)とトランスクリプトーム解析の統合解析から、IRF8はプロモーター遠位のクロマチンに結合することでのエンハンサーの特徴であるヒストンH3リジン4の単メチル化(H3K4me1)を増強し、KLF4を含む単球関連遺伝子の発現を誘導することが明らかとなった。以上のことから単球分化においてはIRF8-KLF4転写因子カスケードが必須であることを昨年我々は報告した(Kurotaki et al. Blood 2013)。興味深いことに上記の研究を進めていく中でIRF8欠損マウスのMDPは単球にならないばかりか、好中球へと分化してしまうことがわかった。現在はIRF8が如何にして単球分化を促進する一方で好中球分化を抑制するのかその分子機構の解明に取り組んでいる。
2: おおむね順調に進展している
昨年は研究成果を血液学のトップジャーナルであるBlood誌に報告することができた。また新たな研究成果を現在Nature Communications誌に投稿中であり、revision invitedとなっている。
IRF8による単球分化促進及び好中球分化抑制がどのように行われているのか特に生体内に少数しか存在しないMDPを用いて分子レベルの解析を進めていく。
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