研究概要 |
我々は、日本人検体を用いたゲノムワイド関連解析(genome-wide association study, GWAS)を実施し、緑内障の主病型である原発開放隅角緑内障(primary open-angle glaucoma, POAG)に強く関連するバリアントをヒト染色体9p21に存在するCDKN2B-AS1上から5つ同定している(Nakanoら, PLoS ONE, 2012)。しかし、9p21領域からは心疾患や糖尿病等の複数の多因子疾患に関連するバリアントが同定されているものの近傍遺伝子との関連性が明らかにされていない上、CDKN2B-AS1も機能未知のノンコーディング遺伝子であることから、本領域には遠隔遺伝子の発現を制御している未知の機構が潜在している可能性がある。そこで本研究は、本領域を次世代シーケンサーによりリシークエンスし調節配列とその標的遺伝子を同定するすることによって、これらのバリアントが緑内障の発症機序に及ぼす影響を解明することを最終目的とする。 本年度は、9p21領域以外に精査すべき領域を抽出するために、上記のGWASにおいて比較的有意性の高かった上位のバリアントについて、我々が以前実施したPOAGのGWAS(Nakanoら, PNAS, 2009)のジェノタイプデータとの統合解析を実施した。その結果、9p21の統合可能な4つのバリアントについてはいずれのバリアントも有意水準が上昇したものの、他の領域では顕著な上昇は認められなかった。しかし、これらの領域もリシークエンス解析すべきと判断し、標的配列を濃縮するためのlong-range PCR用のプライマーを設計した。 一方、POAGとは別の病型である落屑緑内障についても臨床上および緑内障遺伝学の全体像を把握する上で重要であることから、GWAS用の検体集団を準備しジェノタイプデータの取得を開始した。
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