研究課題/領域番号 |
24790336
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
吉田 秀一 浜松医科大学, 医学部, 助教 (10580574)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 表現型予測 / 遺伝型-表現型相関 / SCN1A / 遺伝子診断 |
研究概要 |
SCN1A(OMIM *182389)は、電位依存性ナトリウムイオンチャネル(Nav1.1)をコードする遺伝子であり、全般てんかん熱性けいれんプラス(OMIM#604223)や乳児重症ミオクロニーてんかん(Dravet症候群, OMIM#609208)に代表されるSCN1A関連乳児てんかん性脳症(SRIEE)の責任遺伝子となっている。一方で、同じSCN1Aの変異が原因でありながら、予後良好な熱性けいれんから重篤で進行性のSRIEEまで幅広い病態関わるなど遺伝子型-表現型の相関は不明瞭である。 そこで本研究では、バイオインフォマティクスを活用して、これらSCN1A関連てんかん変異における遺伝子型-表現型の相関の解明と遺伝子変異から重篤なてんかん類型への移行リスクを見積もる予測手法の開発を目的とした。当該年度は、変異前後(野生型と変異型)におけるアミノ酸の物理化学的特性変化及び変異の局在などから遺伝子型-表現型の相関を解析するとともに、見出された遺伝子型-表現型相関を基に表現型予測モデルの構築を行った。 その結果、疎水性や等電荷点などいくつかのアミノ酸の物理化学的性質変化の大きさが表現型と有意に相関にすることを見出した。さらに、表現型との相関が得られた物理化学的性質変化とバイオインフォマティクス的手法を基に表現型予測モデルを構築・評価したところ、本研究で構築した表現型予測モデルは、既存の変異型タンパク質の機能予測法を適用した予測モデルと比べても、SRIEE由来変異の高い分類精度が得られた。これらの成果の一部はJoint Conference on Informatics in Biology, Medicine and Pharmacologyにて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
いくつかの物理化学的特性において、遺伝子変異前後での変化の大きさが表現型(てんかんの重篤度)とよく相関することを見出し、遺伝子変異前後での差異と物理化学的特性の組み合わせを学習データとしてSVMsを適用した予測モデルの構築・評価を行った(これらの成果はJoint Conference on Informatics in Biology, Medicine and Pharmacologyのポスターセッションにて報告)。加えて、既存の変異型タンパク質の機能予測法(PolyPhen~http://genetics.bwh.harvard.edu/pph/)を適用した予測モデルを合わせて構築し、本手法との比較により、本手法の利点・欠点およびその改善点を知ることができた。以上より、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、初年度に構築したアミノ酸の物理化学的特性変化に基づく表現型(遺伝的リスク)予測モデルを他のイオンチャネル病、特にSCN1Aと配列相同性が高い家族性周期性四肢麻痺の責任遺伝子SCN4A (OMIM*603967)やQT延長症候群の責任遺伝子SCN5A(OMIM*600163)などへの適用を行うとともに、本申請課題遂行に際して文献や公共データベースから取得したてんかん関連遺伝子、変異、配列、SNP情報等を活用し、データベースとして情報の集約を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度の研究は、おおむね順調に進展したが、支出額が交付申請時の見込み額を500円程下回ったため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は小額であるため、次年度交付申請額と合わせて、平成25年度の研究計画として予定していた表現型予測システムの構築に費やす見込みである。
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