食道扁平上皮癌におけるSOX2の遺伝子増幅に伴う、癌促進的シグナル経路を明らかにすることを目的とし、SOX2の発現をノックダウンしてリン酸化蛋白アレイを行い、癌促進的な役割を果たすシグナル経路をスクリーニングした。その結果、SOX2の過剰発現はAKT及びmTORC1経路の亢進させることが明らかになり、ウェスタンブロッティングでp-AKT、p-4E-BP1、p-p70S6K、p-S6の発現がSOX2の発現レベルと相関していることを検証した。 in vitroにおいて、PI3K阻害剤を用いてp-AKTを抑制するとSOX2の遺伝子増幅のある食道扁平上皮癌細胞の増殖は濃度依存性に抑制され、mTOR阻害剤を用いても同様の結果が得られた。一方、MEK阻害剤を用いて他の増殖促進経路であるp-ERKを抑制しても増殖抑制効果は得られず、p-ERKを抑制するとp-AKTの発現が上昇していることが明らかになった。 次にヌードマウスの皮下に癌細胞を移植する皮下移植腫瘍モデルを用いて、in vivoでの検討を行った。SOX2の発現が極めて低い細胞にSOX2を強制発現させた安定発現株を樹立すると、vivoにおける腫瘍増殖が亢進している結果が得られ、vivoのサンプルにおいてもSOX2の発現とp-AKT、p-4E-BP1、p-p-70S6K、p-S6K(AKT経路及びmTORC1経路)の発現は相関していた。さらにSOX2強制発現細胞を皮下で腫瘍形成させたのち、PI3K阻害剤を投与するとAKT-mTORC1経路が抑制され、結果として腫瘍増殖が抑制された。 食道扁平上皮癌臨床標本において、tissue micro arrayを用いて、SOX2とp-AKTの発現を調べたところ、発現レベルの相関を認めた。 これらの結果をまとめ、学会発表および論文発表を行った。今後の課題として、SOX2がAKT経路を亢進させる機序について検討を行っているところである。
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