研究課題
本研究は中枢神経原発大細胞性B細胞性リンパ腫(CNS DLBCL)を対象として行う研究であり,[1] 生物学的特性を解明し,[2] 既存の治療に対しての治療効果予測因子を見出し,[3] 新しい治療ターゲットになり得る分子について解析することを目的としている.H24年度には,[1] 生物学的特性の解明として a) 免疫学的形質 (IHC)のプロファイリング b)分子病理学的解析による増殖活性の検討を行い,さらに[3] 既存の治療に対しての治療効果予測因子の検討のため,新規治療ターゲットとなりうる分子として,a) MGMT (O6-methylguanin-DNA methyltransferase)のメチル化に関しIHC検討を終了していた.H25年度では,上記課題[3]に関して,a) MGMT IHCの結果と予後解析,b) 対象症例のパラフィン切片からDNAを抽出し,methylation-specific PCR (MSP)によりMGMTメチル化の検討と予後解析を行った.a) 腫瘍細胞はMGMT IHCで比較的均一な染色性が得られ,4段階評価にてIHC陰性をscore 0, IHC陽性をscore 1~3とし予後解析を行ったところ,IHC陰性にて全生存期間が短い結果が得られた.b) 解析が可能であったのは22例,平均年齢62歳,男:女=11:14であった.MSPでは10例でメチル化が認められた(MSP陽性).またa)でおこなったIHCとの有意な相関が認められた.さらに予後解析では,MSP陽性症例にて無増悪生存期間,全生存期間いずれも短いという結果が得られた.以上本結果からは,MGMTのメチル化のある症例は生存期間が短いという結果が得られた.今後は検討が遅れた課題[2]についてパイロシーケンサーを用いたDNAのメチル化解析を継続する予定である.
3: やや遅れている
H24年度はCNS DLBCLの生物学的特性の解明(上記 [1])に関して終了し,またH25年度は病理組織検体を用いたMGMTタンパク発現(IHC法)およびメチル化 (MSP法)と臨床予後との関係性の検討(上記 [3])を終了した.一方で上記[2]の検討では,global methylationの指標であるLINE-1に着目し検討を進めていたが,これまでMSP解析により進めていた検討では,治療効果予測に関する検討が十分にできなかったため,H25年計画を変更しパイロシーケンサーを用いた定量解析に検討方法を切り替えることとしたが,その結果遅れが生じ,研究期間延長することとなった.以上の状況から,自己点検による評価を(3)とした.
上記[2]の検討については,上述の通り,パイロシーケンサーを用いたLINE-1メチル化の定量解析を行い,この指標がMTXの大量投与および放射線療法の治療効果予測因子となり得るかについて検討を行う.
本研究におけるDNAメチル化解析では,当初メチル化特異的PCR法による定性解析により検討を進めてきたが,その後メチル化レベルの定量評価が研究上不可欠となった.その結果H25年度計画を変更し,特殊機器(パイロシーケンサー)をもちいた定量解析を行うこととしたため,次年度使用額が生じた.次年度も主に物品費に充てる予定であり,費目別には以下のように計画している.【物品費】次年度はパイロシーケンサーを用いた解析及び,この解析のバリデーション検討などを行うこととし,未使用額はこの経費に充てることとする.【旅費】該当なし.【人件費・謝金】該当なし.【その他】本研究で得られた成果を,学会誌等へ投稿することを予定している.研究推進にあたっては,計画に基づき実験を進めていき,研究費を有効活用したい.
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