研究課題/領域番号 |
24790344
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
多田 寛 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50436127)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 乳癌 / 遅発性再発 / ABCトランスポーター |
研究概要 |
東北大学乳腺内分泌外科において2001年から2011年に乳癌根治術を施行した症例のうち再発が確認された80症例について検討を行った。症例を手術から再発までの期間で2年以内再発(35例)、2-5年での再発(22例)、更に遅発性再発(late recurrence)である5年以降の再発(23例)の3群に分けて検討を行った。術後初再発部位は全体で、骨(34.0%)、リンパ節(24.5%)、肺(20.2%)、肝(9.6%)、皮膚・胸壁(8.51%)、脳(3.2%)であった。ただし再発時期と初再発部位の相関は見られなかった。再発時期とサブタイプの検討では、2年以内ではLuminal Aが20.6%、Triple Negative(TN)が23.5%であったが、5年以降ではLuminal Aが68.8%、TNが0%であった。また各群間において手術時の年齢、組織型、Nottigham Histological Gradeは差が見られなかった。再発後の予後の検討では、DFSが長いものほど長期生存が期待できるという結果であった(中央生存期間、2年以内再発:1.68年、2-5年:3.26年、5年以降:6.52年)。再発部位は予後には関係しなかった。以上より、乳癌再発症例においてDFSが5年以上の群では、長期生存が期待できる傾向が認められた。 さらに、ABC トランスポーターの検討では、MDR-1(Abcam)を使用し、2007-2008年の東北大学乳腺内分泌外科のlumial A type手術症例で85例を通常免疫染色で検討。MDR-1のスコアはIRSスコア(Immunoreactive score)を用い、4以上を陽性とした。結果、MDR-1陽性22例(26%)、陰性63例(74%)であった。通常免疫染色ではDFSもOSも統計学的有意差は認められなかった。(OS:P=0.058)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は東北大学乳腺内分泌外科において2001年から2011年に乳癌根治術を施行した症例のうち再発が確認された80症例について臨床情報を解析、症例を手術から再発までの期間で2年以内再発(35例)、2-5年での再発(22例)、5年以降の再発(23例)の3群に分けての検討を行った。ABC トランスポーターのにおいても、MDR-1(Abcam)についても免疫染色の解析を行い、染色条件の検討、さらには無再発生存率、全生存率の検討を行ったが、通常免疫染色では有意差が認められないことを確認した。。現在CD24とCD44についても検討中である。蛍光免疫染色については、条件検討中であるが、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1)抗ALDH1-蛍光ナノ粒子と抗ABCトランスポーター-蛍光ナノ粒子を用いて乳癌組織で蛍光2重染色を行い、乳癌幹細胞の正確な“量“と”機能”を測定:今年度選定した症例の乳癌組織標本に抗ALDH1-蛍光ナノ粒子と抗ABCトランスポーター-蛍光ナノ粒子を反応させ、乳癌組織での免疫染色を行い、申請者らのグループが開発した自家蛍光の影響を排除した手法による蛍光1粒子計測にて高感度定量化を行う。具体的には、各Qdotの波長をかえることで多重染色を行うことで同一切片での観察が可能である。同一切片での染色性が確かであることは隣接薄切切片のミラーイメージを用いて検証する。 2)ALDH1陽性の癌細胞群の組織内分布と脈管との位置計測:ALDH1陽性のパターンをとる癌細胞群が組織のどこに“分布”しているか、特に小血管やリンパ管の近傍に存在しているかどうかを同一癌組織の複数切片で観察する。蛍光ナノ粒子を用いた病理組織標本観察では、蛍光干渉の少ないヘマトキシリン染色で核を染色し、細胞の形態を認識することが可能である。脈管に関しては形態的に把握できるため、蛍光及び明視野を切り替えることで乳癌幹細胞と脈管の位置関係を測定する。 3)解析:上記3~4の結果を元に、臨床データとの統計学的解析を行い、どのような因子・条件が乳癌幹細胞が遅発性再発に関連するかの検証を行う。具体的には乳癌組織内での抗ALDH1-蛍光ナノ粒子と抗ABCトランスポーター-蛍光ナノ粒子の1粒子定量化を行った後、測定量をそれぞれ10段階に分類し、腫瘍内脈管との距離の測定したデータを各患者群毎比較し、遅発性乳癌の予測因子となり得るかの検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、当初計画していた抗ALDH1抗体、抗ABCトランスポーター抗体のin vitroでの結合性の確認を次年度に延期することにより生じたものであり、延期した抗ALDH1抗体、抗ABCトランスポーター抗体のin vitroでの結合性の確認に必要菜経費として、平成二五年度請求額と合わせて使用する予定である。また、当初の体である病理組織切片での蛍光ナノ粒子を用いた蛍光免疫染色及び臨床データとの解析を行うため、蛍光ナノ粒子、抗体(抗ALDH-1抗体、抗ABC-トランスポーター抗体)、試薬、及び成果発表の為の、論文校正費、学会発表費を研究費から使用する予定である。
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