研究課題/領域番号 |
24790347
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松坂 恵介 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40610150)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | DNAメチル化 |
研究概要 |
DNAメチル化は遺伝子発現を制御するエピジェネティクス機構のひとつとして癌や発生分化での重要性が知られている.我々は先行研究における胃癌DNAメチル化の網羅的解析により, Epstein-Barr virus (EBV) 陽性胃癌がゲノムワイドにメチル化の亢進した一群であり,in vitroのEBV感染実験により低メチル化形質を示す胃癌細胞株(MKN7)にEBV陽性胃癌と同様のメチル化形質を誘導できることを明らかにした.こうした新規DNAメチル化の誘導には宿主細胞とEBVの密接な相互作用が寄与しているものと推測され,それらを明らかにする目的でEBV感染成立後の宿主細胞・EBV両者のDNAメチル化と遺伝子発現の変化を経時的かつ定量的に解析することが本研究の骨子である. 計画通り感染実験の経時的解析を行った結果,ウイルスゲノムのDNAメチル化は感染約2週間後に,宿主細胞ゲノムのDNAメチル化はさらに1週間後に完成することが明らかとなった.これまでの系では感染細胞樹立までに約4か月かかっていたが,今回の解析で明らかになったことを要約すると,(1)約3週間という短い時間でウイルス・宿主細胞両者のDNAメチル化が完成すること,(2)ウイルスゲノムのDNAメチル化は宿主細胞のそれに先行する形で時間差が存在すること,この二点である. ちなみに,EBV感染実験にはネオマイシン耐性遺伝子組み換えEBV(rEBV)が感染している浮遊細胞株(Akata)を用いており,選択薬剤G-418で選択が完了する10日前後より早期の時相を解析するためには,より高い感染効率が必要ではないかと危惧していたが,実際には宿主細胞のDNAメチル化誘導はG-418による薬剤選択が完了した後の時相で認められたため感染効率の影響はなかった.現在,網羅的にDNAメチル化解析や遺伝子発現解析も含めたより詳細な解析を進行中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画時に危惧していた感染効率の問題が研究概要で述べた通り大きな問題がなかったため,感染早期の変化を計画通りに解析できている.
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今後の研究の推進方策 |
得られたサンプルからDNAメチル化ならびに遺伝子発現に関して網羅的な解析を行い,より詳細なデータの抽出を試みる予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
マイクロアレイや次世代型高速シーケンサーを用いた網羅的解析を主体に研究費を用いる予定である.
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