研究課題
本研究は、がんの所属リンパ節とがん免疫の関係に着目し、抗原提示細胞であるリンパ節洞マクロファージ(Mφ)とがん免疫能ならびに生命予後を反映するマーカー分子を同定することが目的である。前年度の研究により、CD169が炎症性Mφを識別する有用なマーカー分子であり、リンパ節のCD169陽性Mφが単変量ならびに多変量解析にて大腸がん患者の独立した予後因子になることを明らかにした。本年度は、CD169陽性Mφと腫瘍免疫に直接関与するCD8陽性Tリンパ球との関連について検証した。まずは腫瘍組織内に浸潤するCD8陽性Tリンパ球との相関性を免疫組織学的に検討し、所属リンパ節のCD169陽性Mφ数と腫瘍組織内のCD8陽性Tリンパ球数が正の相関を示すことを明らかにした(R = 0.445, p < 0.0001)。リンパ節洞を組織学的に解析すると、CD169陽性MφはCD8陽性Tリンパ球と直接接触しており、これらの細胞間相互作用がリンパ球活性化に関与している可能性が想定される。さらにリンパ節洞のCD169陽性Mφの周囲にはIFNα産生細胞が散見された。ヒトMφを対象とした培養実験では、IFNαはCD169の強力な誘導因子であり、このIFNαがリンパ節MφのCD169発現を維持している可能性が推測される。Mφとリンパ球の共培養によるリンパ球増殖試験では、IFNαで誘導したCD169陽性Mφにリンパ球増殖促進能を認めた。以上の結果より、所属リンパ節のCD169陽性Mφは主にCD8陽性Tリンパ球を介したがん免疫を活性化している可能性が示唆され、CD169は大腸がんの有用な新規予後マーカーになると考えられる。本研究成果はCancer Science誌に発表した。
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