研究課題/領域番号 |
24790356
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
宮部 悟 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (40534582)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 唾液腺腫瘍 / 分子病理学 |
研究概要 |
粘表皮癌は唾液腺悪性腫瘍の中でもっとも頻度の高い腫瘍である。我々はこれまで、新規遺伝子異常CRTC1-MAML2キメラ遺伝子およびCRTC3-MAML2キメラ遺伝子が、この腫瘍に特異的であり、予後良好と関連する重要な分子生物学的マーカーであることを世界に先駆けて報告した。キメラ遺伝子による腫瘍発生機序としてcAMP response-element binding proteinシグナル経路を異常化することが想定されているが、その詳細は明らかではない。申請者はCRTC1-MAML2、CRTC3-MAML2キメラ遺伝子による腫瘍発生機序、想定されるその他の遺伝子異常、現在用いられている分子標的治療剤の応用の可能性を明らかにするために以下の研究を中心に行っている。 1)その他のMAML2関連遺伝子異常のスクリーニングおよび同定,2)腫瘍発生および腫瘍進展に関連する遺伝子DNAメチル化異常の検索。1)については、キメラ遺伝子をパラフィン包埋切片からFISH法を用いて検出する方法を開発し、従来のRT-PCR法を用いての検出法と併用した結果より検出感度特異度ともに高くなる可能性があることをまとめ、論文化した (Clinicopathological significance of MAML2 gene split in mucoepidermoid carcinoma.Noda H, Miyabe S, et al. Cancer Science 2012)。 また2)腫瘍発生および腫瘍進展に関連する遺伝子DNAメチル化異常の検索についてはパラフィンから抽出したDNAを用いた後方視野的解析を行い、各癌抑制遺伝子の臨床病理学的特徴をまとめ、論文化を急いでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者はCRTC1-MAML2、CRTC3-MAML2キメラ遺伝子による腫瘍発生機序、想定されるその他の遺伝子異常、現在用いられている分子標的治療剤の応用の可能性を明らかにするために、以下5つの研究を2年間の研究対象として、研究計画を立てた。 1)CRTC1-MAML2、CRTC3-MAML2キメラ遺伝子導入およびサイレンシングによる遺伝子発現プロファイル変化と表現型変化を明らかにする、2)粘表皮癌およびキメラ遺伝子特異的に関与するmicroRNAの解析、3)腫瘍発生および腫瘍進展に関連する遺伝子DNAメチル化異常の検索、4)EGFR、HER2、VEGFなど分子標的治療剤の応用に関する解析、5)その他のMAML2関連遺伝子異常のスクリーニングおよび同定。 研究実績の概要に示した通り、5)および3)について優先的に研究を進めており、5)の内容の論文化を含め、一定の成果を得ている。今後残りの項目について、順次研究成果を蓄積し、順次報告する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
5つの研究を2年間の研究対象として、研究計画を立てた。1)CRTC1-MAML2、CRTC3-MAML2キメラ遺伝子導入およびサイレンシングによる遺伝子発現プロファイル変化と表現型変化を明らかにする、2)粘表皮癌およびキメラ遺伝子特異的に関与するmicroRNAの解析、3)腫瘍発生および腫瘍進展に関連する遺伝子DNAメチル化異常の検索、4)EGFR、HER2、VEGFなど分子標的治療剤の応用に関する解析、5)その他のMAML2関連遺伝子異常のスクリーニングおよび同定。 現在までの達成度で示した通り、上記1)2)4)について当初に予定した方法に基づいて研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
5つの研究を2年間の研究対象として、研究計画を立てた。そのうち研究成果のまとまっていない1)CRTC1-MAML2、CRTC3-MAML2キメラ遺伝子導入およびサイレンシングによる遺伝子発現プロファイル変化と表現型変化を明らかにする、2)粘表皮癌およびキメラ遺伝子特異的に関与するmicroRNAの解析、4)EGFR、HER2、VEGFなど分子標的治療剤の応用に関する解析、について、今後研究をまとめていく。具体的には1)CRTC1-MAML2、CRTC3-MAML2キメラ遺伝子導入およびサイレンシングによる遺伝子発現プロファイル変化と表現型変化を明らかにする研究においては、RKEおよびRK3E細胞、キメラ遺伝子陽性粘表皮癌細胞株H292およびH3118を購入して行う。この際、総額約40万円の物品費用となる予定である。 また2)粘表皮癌およびキメラ遺伝子特異的に関与するmicroRNAの解析、4)EGFR、HER2、VEGFなど分子標的治療剤の応用に関する解析、などの研究で使用する各種プローベ、研究試薬の購入の為必要な物品費は約35万円になる予定である。
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