研究概要 |
粘表皮癌は唾液腺悪性腫瘍の中で最も頻度の高い腫瘍である。我々はこれまでに、新規遺伝子異常CRTC1-MAML2およびCRTC3-MAML2キメラ遺伝子が、この腫瘍に特異的であり、予後良好と関連する重要な分子生物学的マーカーであることを世界に先駆けて報告した。本キメラ遺伝子による腫瘍発生機序を明らかにし、キメラ遺伝子を利用した新しい粘表皮癌悪性度評価法の構築と、世界標準となる新診断基準の制定を目指して以下の研究を行った: 1)これまで報告されているMAML2関連と考えられる遺伝子異常以外の遺伝子異常を検索するため、3'RACE,5'RACE法を用いて未知の'MAML2遺伝子と融合している遺伝子検索'を行ったが結果はnegativeであった。パラフィン切片から抽出したmRNA試料を用いていることからRACE法に反応していない可能性が考えられたため、その他の検索法として、MAML2 break apart FISH probeを用いて、当研究チームが有している120例の粘表皮癌について検索を行ったが、同様に新規遺伝子異常は検出されなかった。現在新たな遺伝子異常検索方法をすでに策定し、すでにpreliminaryなデータを蓄積しているため、今後順次報告予定である。 2)本キメラ遺伝子の臨床病理学的意義の確定を目的とした多施設共同前方視的研究として、当研究チームの所在する名古屋医療圏に於ける大規模唾液腺腫瘍治療施設から、唾液腺腫瘍症例をこれまでの粘表皮癌120例に加え20例の計140例、およびその他の唾液腺腫瘍も約80例について症例収集を行った。臨床情報、パラフィンブロック薄切標本その他はすでに収集予定であり、今後順次論文として経過、内容を報告予定である。
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