研究概要 |
甲状腺未分化癌,ならびに,他の癌腫におけるPODXLの役割を,悪性度増大,未分化転化の点で明らかにし,PODXLを標的とする治療法への応用を検討した.ヒト組織を用いてPODXL, ezrin, リン酸化ezrin等のPODXLと関連する経路分子を免疫染色にて行い,臨床病理学的に解析した.甲状腺腫瘍通常標本での免疫染色では,PODXLは甲状腺未分化癌特異的であった.ezrin, リン酸化ezrin発現は甲状腺癌症例に強くみられ,分化形質発現の減弱との関連がみられた.乳頭癌症例では,ezrin, リン酸化ezrinは乳頭癌局所浸潤,リンパ節転移と正の相関関係を有していた.未分化癌ではリン酸化ezrin発現がPODXL陰性例でもみられ,また,PODXLとリン酸化ezrin発現の相関がみられた.子宮体癌腺癌では,PODXL発現は,p53やKi-67発現との相関がみられ,腫瘍グレード,臨床病期との相関がみられた.リン酸化ezrin発現もp53, Ki-67発現ならびに臨床病期との発現を示した.PODXLとリン酸化ezrinとの発現相関もみられた. ヒト甲状腺癌培養細胞株でPODXL強制発現を行い,増殖能,浸潤転移能の変化を解析あ.ヒト甲状腺癌培養細胞株のPODXL強制発現では形態変化は引き起こされなかったものの増殖能増大,浸潤・運動能増大が引き起こされた.両者の増大をみるものはなく,増殖能もしくは浸潤・運動能いずれかの増大がみられた.浸潤・増殖能増大をみたものでは,足突起の発達がみられ,同部位にアクチン集簇,収束がみられ,PODXL発現,リン酸化ezrin集簇がみられた.分化形質喪失,未分化転化に係わる分子検索を行うも,培養癌細胞の多くは元来分化形質を喪失していた.
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