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2012 年度 実施状況報告書

膵癌における孤在性浸潤の分子機構:孤在性癌細胞に発現する分子の同定および機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 24790362
研究種目

若手研究(B)

研究機関慶應義塾大学

研究代表者

眞杉 洋平  慶應義塾大学, 医学部, 助教 (90528598)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード人体病理学 / 膵がん
研究概要

申請者は,膵癌の特徴的な病理組織像である,癌細胞が間質内で単独に浸潤する像,孤在性浸潤(SCI)に着目し,膵癌の中でもSCIが高頻度の症例は予後不良であることを初めて報告した (Hum Pathol 2010).本研究では,マイクロアレイ解析を通して得られた網羅的遺伝子発現情報を用いて,孤在性癌細胞で発現する分子の同定と機能解析を行い,難治性がんの代表である膵癌の悪性度分子診断や新規治療ターゲットの開拓へと展開するための基盤となる研究を行う.本年度実施した研究成果は,以下の3項目である.
1)網羅的遺伝子発現情報から膵癌SCIに関わる分子候補の絞り込み:網羅的遺伝子発現情報の得られている膵癌12 症例についてSCIの頻度に基づきクラスター解析を行い,膵癌SCI に関わる分子候補を得た.SCI 高頻度症例で高発現する分子の中で,TGFbetaシグナルの中心分子SMAD3,孤在性癌細胞・間質の相互作用に重要と予想されるインテグリンXに特に注目した.
2)孤在性浸潤癌細胞に発現する分子の同定・臨床病理学的意義の検討:多症例(約150例)の膵癌切除組織を用いて,免疫組織学的なSMAD3およびインテグリンXの発現を検討したところ,いずれの分子も孤在性癌細胞に強い発現がみられ,リンパ節転移や予後との相関をみることで,これらの分子の高発現が悪性度の高い膵癌で高頻度にみられることが明らかとなった. SMAD3ならびにインテグリンXは,膵癌の悪性度を予想する新規バイオマーカーとなる可能性が示された.またSMAD3・インテグリンXの発現はいずれも,上皮間葉移行(EMT)関連分子の発現とも相関することが明らかとなり,膵癌EMTにおいて重要な役割を担っている可能性も示唆された.
3)研究成果の発表:研究成果の一部を海外の学会にて発表した.また同内容についての原著論文を投稿中である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請者は,膵癌に比較的特徴的な病理像である癌細胞が間質内で単独に浸潤する像,孤在性浸潤に着目し,孤在性浸潤の高度な膵癌は予後不良であることを報告した.本研究では,膵癌組織の網羅的遺伝子発現解析を用いて,孤在性癌細胞で発現する分子の同定とその機能解析を行い,膵癌の悪性度診断や新規治療法の開発へと展開するための基盤となる研究を行う.
具体的な研究項目は,1)網羅的遺伝子発現情報から膵癌孤在性浸潤に関わる分子候補の絞り込み,2)孤在性浸潤癌細胞に発現する分子の同定・臨床病理学的意義の検討,3)膵癌細胞株を用いた機能解析・分子機構の解明,4)移植マウスモデルを用いたin vivo機能解析である.本年度は項目1ならびに2を中心に行い,予備実験で得られていた結果から予想された結果を得ることができ,項目1ならびに2は概ね達成されたと考える.次年度以降は申請当初の計画通り,項目3および4に重点を置き,膵癌細胞株ならびにモデルマウスを用いたSMAD3ならびにインテグリンXの機能解析やシグナル伝達機構の解析を行うことで,膵癌孤在性癌細胞に発現する分子の機能解析と意義を明らかとする.既に膵癌培養細胞株を用いた予備的実験を開始しており,新たな研究成果も得られつつある.以上のような理由から,研究目的の達成度は「(2)おおむね順調に進展している」と自己評価した.

今後の研究の推進方策

平成25から26年度にかけての研究は,以下の3つの研究項目を順次行う.
1) 膵癌細胞株を用いた孤在性浸潤癌細胞に発現するの分子の機能解析・分子機構の解明:本研究項目では,孤在性浸潤癌細胞に発現する分子の中でも特にSMAD3ならびにインテグリンXに着目し, in vitroならびにin vivo実験系におけるそれぞれの分子の機能解析を行うことにより,膵癌SCIの分子機構を明らかとし,治癒困難な膵癌に対する新規治療法の開発に向けた基礎研究を行う.以下の3項目を柱に実験を進める.①膵癌培養細胞株における有力候補分子の遺伝子発現,蛋白発現を解析する.②培養細胞株を用いた有力候補分子の強制発現による機能解析.③培養細胞株を用いた有力候補分子のノックダウンによる機能解析.
2) 移植マウスモデルを用いた膵癌孤在性浸潤に関わる分子のin vivo機能解析:本研究項目では,SMAD3ならびにインテグリンXを安定的に強制発現またはノックダウンした膵癌培養細胞株を,当研究室で飼育可能な免疫不全マウスの膵臓に移植し,ヒト膵癌に近い状況における転移能や造腫瘍能を評価する.膵癌患者では高率に肝転移およびリンパ節転移を起こすので,特に肝臓とリンパ節への転移に差がでるかどうかをみる.
3) 臨床応用に向けた研究成果の発表,基盤形成:研究成果を国内外の学会で発表し,平成26年度に数本の原著論文として報告する.一方で,当研究室で蓄積している,膵癌切除検体の凍結サンプルや患者血清を利用して,例えば注目分子が血清で検出可能かどうか等を検証し,臨床応用の実現方向性を模索する.

次年度の研究費の使用計画

次年度交付申請合計額の1,300,000円の内,直接経費としては1,000,000円,間接経費としては300,000円を使用する.次年度に行う研究は,当研究室と共同利用施設の設備範囲内で行う研究であり,直接経費は主に消耗品費と旅費等により積算する.膵癌細胞株および移植モデルマウスの組織における候補分子の発現を免疫染色や蛍光染色で検出するために,抗体購入費として150,000円を計上する.膵癌細胞株を用いた実験において,遺伝子・蛋白発現の検出に加え,特に遺伝子導入,浸潤アッセイキットおよび孤在性浸潤を誘導するための増殖因子が必要となるので,培養器具・核酸プライマーおよび各種試薬の購入する.これらの消耗品費として350,000円を使用する.また免疫不全マウスを用いた実験を行うために,マウスの飼育・管理に必要となる飼料および床敷き代として100,000 円を計上する.本研究の成果報告を学会ならびに原著論文で報告するため,旅費として100,000円,外国語論文の校閲ならびに投稿料として計200.000円が必要となる.本研究では,DNA 塩基配列解析を,慶應義塾大学医学部共同利用研究室に依頼する予定であり,解析依頼料に対して,100,000 円を使用する.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] SMAD3 upregulation is a novel biomarker of poor prognosis and epithelial-mesenchymal transition in pancreatic cancer2013

    • 著者名/発表者名
      Ken Yamazaki, Yohei Masugi, Kathryn Effendi, Michiie Sakamoto.
    • 学会等名
      American Association of Cancer Research annual meeting 2013
    • 発表場所
      Washington DC, USA
    • 年月日
      20130406-20130410

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公開日: 2014-07-24  

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