研究概要 |
リンパ脈管筋腫症(LAM)は、TSC遺伝子変異によりmTORシグナル伝達系が恒常的に活性化した結果生じる腫瘍細胞であり、リンパ管増殖因子であるVEGF-Dの発現を特徴とする。LAM細胞では、HIF-1αの発現量がVEGF-Dの発現を制御しているとの仮説のもと、LAM細胞のphospho-S6(mTORシグナル伝達系下流蛋白), VEGF-D及びHIF-1αの発現を免疫組織科学的に検討した。材料は重症LAM患者の移植肺組織、ホルマリン固定・パラフィン包埋材料10例及び部分切除肺組織、ホルマリン固定・パラフィン包埋材料1例。結果は、phospho-S6, VEGF-Dの発現を全症例で認めたが、全症例でHIF-1αは弱陽性を示すLAM細胞が5%未満にみられるのみであった。血管新生を来す腫瘍細胞と異なり、LAMでは、VEGF-Dの発現及びリンパ管新生を介した腫瘍進展にHIF-1αの果たす役割は限られていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の仮説である「LAM細胞では、HIF-1αの発現量がVEGF-Dの発現を制御している」を支持する結果が得られなかった。HIF-1αの染色性に関しては、ホルマリン固定・パラフィン包埋肺腺癌組織を対象症例として高発現像を確認しており、LAM細胞がHIF-1α高発現を示す可能性は低いと考えられる。LAMの病因とされるTSC遺伝子変異及びmTORC1の恒常的活性化はCyclinD1, p27, PLK1, β-catenin, MMP7, SREBP, PKM2の発現にも関与していると考えられているが、mTORC1の恒常的活性化とVEGF-D発現及びそれに伴うリンパ管新生との関連は不明のままである。また、プロテオーム解析を行い、対象例とした肺腺癌では、galectin-4がリンパ節転移関連蛋白である可能性を示唆する結果が得られたが、LAM細胞での高発現は現在まで明らかではない。
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