研究課題
Pulmonary tumor thrombotic microangiopathy (PTTM)は肺動脈の腫瘍塞栓、内膜肥厚、フィブリン血栓を特徴とする肺動脈腫瘍塞栓症の重篤な特殊型であり、その予後は極めて不良とされる。特に、肺動脈の改築が肺高血圧を招来すると推測されているが、両者の関連について詳細な研究は行われていない。本研究ではPTTMによる、肺動脈の構築および血行動態に与える影響を解明すべく、胃癌剖検例を用いて詳細な病理組織学的解析を遂行した。 (東邦大学医学部 倫理委員会承認済、承認番号: 23002、課題名: 剖検例を用いた肺腫瘍塞栓性微小血管(PTTM)における血行動態の解析)。肺動脈内に癌細胞が確認される症例を集積した結果、最終的に収集し得た剖検例は51症例であった。この内、約40%の症例で胃癌細胞の定着・増殖による線維性内膜肥厚ならびにフィブリン血栓が確認でき、PTTM症例であることが判明した。次いで、研究代表者らは本例がどのように血行動態へ影響するか明らかにすべく、渉猟し得た51症例の右心室厚を計測し、PTTM症例では有意に右心室が厚くなることを明らかとした。肺動脈内腔に認める胃癌細胞を循環している状態と理解するならば、胃癌細胞は肺動脈内腔を循環するだけでは肺動脈狭窄を招来せず、肺動脈に定着、増殖し間質を誘導することにより血管を狭窄させるものと推測される。以上、ひとたび胃癌細胞が肺動脈に定着、増殖することで肺動脈狭窄が起こり肺高血圧を招来するものと推測された。本研究では、極めて予後不良な病態とされるPTTMの発生頻度や血行動態への影響の一端を明らかにする事に成功した。得られた知見は臨床医への注意喚起に活用できると同時に、将来的なガイドライン等の作製において有益な情報基盤を提供し得る。
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