研究課題/領域番号 |
24790374
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
島岡 猛士 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90422279)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 線維症 |
研究概要 |
線維芽細胞特異的エンハンサー下にGFPを発現するCol1a2-GFPマウス骨髄よりセルソーティング法によりCD45(-)CD31(-)Ter-119(-)ScaI(+)PDGFRa(+)Col1a2-GFP(-)間葉系幹細胞(MSC)の採取を取得した。PDGFRaを発現しているこれらの細胞は、おのおの分化誘導サイトカインにより脂肪細胞や骨芽細胞に分化し、多分化能を間葉系幹細胞としての性質を有していた。さらにこのMSC初代培養細胞株にCTGFとbFGFを添加するとコラーゲンの産生を示すGFPの発現が見られ線維芽細胞への分化能を有し線維化促進に働くことが示唆された。PDGF単独添加では分化誘導能に差は現在のところ見られていないが、CTGFなどとの共刺激等により分化への影響が起こるか現在検討中である。 PDGF受容体遺伝子αまたはβの遺伝子領域をCreリコンビナーゼ標的配列loxPで挟んだfloxマウスをJakson研究所から購入し、間葉系幹細胞特異的プロモーターであるnestinのプロモーターを用いたNES-Cre/esrとまたポジティブコントロールとして全身性にCre/esrを発現しているCAG-Cre/esrと掛け合わせた。 NES-Cre/esrxPDGF受容体遺伝子αまたはβfloxマウスにおいて、タモキシフェン投与後に間葉系幹細胞依存的にCreが発現し遺伝子産物発現が抑制することが確認できた。現在ブレオマイシン投与における肺線維症にこれらの間葉系幹細胞特異的遺伝子欠損がどのように影響を及ぼすのか解析中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究の研究計画のひとつであるPDGF受容体の発現細胞について、間葉系幹細胞にPDGF受容体が発現していることを確認し、その細胞が線維症に重要だと考えられる線維芽細胞に分化することを確認できた。 またもうひとつの平成24年度の研究の研究計画である間葉系幹細胞特異的プロモーターであるnestinのプロモーターを用いたNES-Cre/esrとPDGF受容体遺伝子αまたはβの遺伝子領域をCreリコンビナーゼ標的配列loxPで挟んだfloxマウスを掛け合わせたマウス系統を樹立し、次のステップであるブレオマイシン誘導性肺線維症における様々な細胞系譜特異的PDGF受容体欠損マウスの解析への準備を整えることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
ブレオマイシンはDNA鎖を切断することによってがん細胞の抑制に働く薬剤である一方、副作用として肺損傷さらには肺線維症を惹起することが知られている。細胞系譜特異的PDGF受容体欠損マウスにおいてこのブレオマイシンにより肺線維症を誘導し、ハイドロキシプロリン含有量・コラーゲン沈着量を測定し線維化の程度を解析する。また免疫組織化学的に筋線維芽細胞などの各種細胞の動員、各分子の発現の変化を観察する。さらにタモキシフェン(CreERタンパクを核内移行させてPDGF受容体遺伝子を欠失させる)投与時期を調節し、病態発症におけるPDGF受容体遺伝子発現細胞の時間軸での役割も解明する。また必要に応じて組織間細胞移動可視化マウス(KiKGRトランスジェニックマウス)、細胞周期可視化マウス(Fucciトランスジェニックマウス)、アポトーシス可視化マウス(SCAT3.1トランスジェニックマウス)などを使用して、線維化発症の際の細胞動態を観察する。さらにブレオマイシン誘導性肺線維症モデルにおいて興味深い結果が得られた細胞系譜特異的PDGF受容体欠損マウスについては他の線維化発症モデルにおいても検証を行い、その細胞種の線維化発症における役割を解析する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子改変マウスの作成・購入、飼育を含め経費として研究期間総計で700千円を計上している。さらに、免疫組織学染色やフローサイトメトリーなどに使用する抗体に550千円、マウスから採取した細胞を培養する際に必要な細胞培養試薬の購入費を100千円を計上し、その細胞を用いて分子生物学的実験を行うのに必要な関連試薬の購入費として研究期間総計400千円を計上している。さらに研究を行う際に用いるプラスチック器具の購入費を計350千円計上している。また国内外における研究成果発表のための旅費に400千円計上しており、総計で2500千円を使用する計画である。
|