研究課題
大腸がんの形成、浸潤・転移におけるmTOR経路の役割を解明昨年度はmTORC1経路の大腸がんに与える影響を検討するため、mTORC1阻害薬をApc/Smad4マウスに6週齢から14週齢までの8週間投与し、ポリープの拡大を抑制する事を確認した。一方、浸潤の度合いに関しては阻害薬投与群で抑制傾向が認められたが、大きなポリープが少ないため浸潤を測定する対象が十分得られていない可能性があることから、今年度では大きなポリープが出来る10週齢からmTORC1阻害薬を投与し、浸潤に対する影響を検討した。6週齢から投与した結果と同様、1.5mm以上の大きいポリープの形成は減少していたが、浸潤は抑制しなかった。より強力にmTORC1経路を抑制し、さらにmTORC2経路も抑制できるmTORキナーゼ阻害薬AZD8055をApc/Smad4マウスに投与し、大腸がんの形成、および浸潤に対する効果を検討した。mTORC1阻害薬によるポリープの拡大抑制効果は8週間の投与期間を必要としたが、mTORキナーゼ阻害薬は2週間の短い投与期間でも有意に大腸がん形成を抑制した。しかしながら、大腸がんの浸潤はmTORC1阻害薬と同様抑制効果は認められなかった。この結果は浸潤性の大腸がんがmTOR阻害薬に抵抗性を獲得している可能性を示唆している。mTOR阻害薬によるフィードバック効果を検討するため、受容体型チロシンキナーゼアレイを行ったところ、EGF受容体のリン酸化が亢進している事を確認した。さらに大腸がん細胞株にmTORキナーゼ阻害薬とEGF受容体阻害薬Erlotinibを併用し、それぞれ単独で処置するよりも強力に細胞増殖を抑制する事を確認した。以上の結果から大腸がんの浸潤などの悪性化進展においてはEGF受容体の活性化がmTORキナーゼ阻害薬に対する抵抗性をもたらす可能性を示唆している。
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Gastroenterology
巻: 145 ページ: 1064-1075
10.1053/j.gastro.2013.07.033.