研究課題/領域番号 |
24790385
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山形 薫 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), グローバルCOE研究員 (80533786)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 組織線維化 |
研究概要 |
【研究成果の内容】ヒト扁平上皮細胞において上皮間葉転換(EMT)関連Snail遺伝子を強制発現後、液性因子Wnt5aとその受容体Ror2が発現誘導される。その後、Wnt5a-Ror2シグナルの作動を介して発現誘導される細胞外基質分解酵素MMP-2により、基底膜の細胞外基質が破壊され、がん細胞浸潤に寄与することが明らかにされている(Gene Cells 2011; 16; 304)。EMTによる腎線維化病態への関与が示されているが、Wnt5a-Ror2シグナルによる本病態への関与については不明である。本研究において、腎線維化を示す片側尿管閉塞(UUO)マウスモデルを用いて、尿細管上皮細胞におけるRor2の発現誘導を検出した。免疫蛍光染色法により、Ror2発現細胞においてEMTマーカー群(Snailとvimentin)およびMMP-2の発現が示唆された。興味深いことに、隣接する尿細管基底膜の破壊が検出された。さらにUUO操作後、Ror2+/+と比較してRor2+/-マウスの腎において、MMP-2発現低下により、尿細管基底膜破壊が抑制された。腎線維化過程において尿細管基底膜の破壊におけるWnt5a-Ror2シグナルの重要な役割を見出した(Gene Cells, in press)。【意義】Wnt5aが腎線維化病態と密接に関わることは知られていたが、その受容体であるRor2の機能および役割については不明であった。本研究で、Wnt5a-Ror2シグナルの活性化によりMMP-2産生を介して尿細管基底膜の破壊に至る重要な経路を初めて明らかにした。【重要性】腎線維化過程においてWnt5a-Ror2シグナルの活性化が腎病態と密接に関連することを見出した。本研究の成果は関連分野の研究に重要な知見をもたらし、今後展開される解析の重要な基盤を担うと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り研究が進み、本研究課題の計画の半分を遂行した。現在までに得られた研究成果をまとめ、投稿後、国際学術誌における掲載が決定している(Gene Cells, in press)。よって、本研究課題はおおむね順調に進展したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は腎線維化病態におけるRor2のさらなる役割およびRor1の病態への関与について解析する。さらに、腎線維化過程において変動する水溶性代謝物の検出および本病態におけるその役割について解析することを目標にしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
①腎線維化の進展におけるWnt5a-Ror2シグナルの機能解析-前年度、腎線維化におけるRor2の重要な関与について明らかにした。今年度、生体内におけるWnt5a-Ror2シグナルの役割について明らかにするために、分泌型Ror2受容体(Wnt5aデコイ受容体)をマウス腹腔に投与する。Wnt5a-Ror2シグナルの不活性化について確認後、腎線維化進展の程度について評価する。さらに、代表的な線維化関連因子群の発現変動を解析する。 ②腎線維化の進展におけるRor1の機能解析-分子生物学的手法、細胞生物学手法を用いて、腎線維化におけるRor1の関与を明らかにする。 ③腎線維化と代謝動態変動の関連解析-腎不全症では、代謝動態が変動していることが予想される。そこで、腎線維化マウスを用いて、糖、アミノ酸、グルタチオン等の代謝産物量を測定するために、腎組織のメタボローム解析を実施する。
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