研究課題/領域番号 |
24790387
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
石黒 尚子 鳥取大学, 医学部, 助教 (50346350)
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研究期間 (年度) |
2013-02-01 – 2017-03-31
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キーワード | 軟部腫瘍 / 融合遺伝子 / 病態解析 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、胞巣状軟部肉腫特異的融合遺伝子であるASPL-TFE3が転写因子として機能する点に注目してASPL-TFE3が標的遺伝子群の脱制御を導くことで腫瘍細胞に与える生物学的影響を解析し、胞巣状軟部肉腫の病態に対する理解を深めることを目的としている。本年度は、昨年度に同定したASPL-TFE3標的遺伝子候補群が、下流シグナルおよび腫瘍細胞の動態に与える影響について検討を行い、以下の結果を得た。 1、ASPL-TFE3標的遺伝子のさらなる同定を試み、新たな候補遺伝子2個を同定した。 2、ASPL-TFE3安定発現細胞株を用い、ASPL-TFE3の存在下または非存在下における標的遺伝子候補群の発現を、リアルタイムPCR法ならびにウエスタンブロット法で検討した。その結果、ASPL-TFE3存在下で増殖因子を含む幾つかのASPL-TFE3標的遺伝子候補の顕著な発現上昇を認めた。 3、ASPL-TFE3導入細胞と非導入細胞におけるチロシンキナーゼ受容体経路の活性をウエスタンブロット法で解析し、ASPL-TFE3存在下ではMAPKシグナル経路およびAktシグナル経路に含まれる因子の活性が亢進していることを確認した。 以上より、本年度の研究成果として新たなASPL-TFE3標的遺伝子候補を同定するとともに、ASPL-TFE3による標的遺伝子候補の発現誘導を実証した。また、ASPL-TFE3はMAPKおよびAktシグナル経路の活性亢進を導くことで、腫瘍の増殖や進展に寄与する可能性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画では、ASPL-TFE3標的遺伝子候補群がその下流因子や腫瘍細胞の生物学的動態に及ぼす影響について解析することを予定していたが、実際にASPL-TFE3が幾つかの標的遺伝子候補の発現を大幅に上昇させるを証明し、ASPL-TFE3がMAPKおよびAktシグナル伝達経路の活性亢進を誘導することを確認するなど、ほぼ当初の計画通りに進展した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに得られた結果に基づき、今後はASPL-TFE3標的遺伝子やMAPKおよびAktシグナル伝達経路の活性化が腫瘍細胞に与える影響を、内因性ASPL-TFE3発現細胞株FU-UR1を用いて解析することを計画している。具体的には、標的遺伝子の発現を抑制することで腫瘍細胞の増殖および運動能に与える影響をin vitroで解析する。また、MAPKおよびAktシグナル伝達経路の特異的阻害剤がFU-UR1細胞の動態に与える影響についても検討を行う。さらに、胞巣状軟部肉腫の臨床検体におけるASPL-TFE3標的遺伝子群の発現についても解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外メーカーから入手を予定していた研究用キット試薬がメーカー欠品となり年度内に入手できなかったため、物品費が計画より低く抑えられた。さらに、実験を効率的に実施するためキット試薬を使用したことから物品費の不足が懸念され、学会出張を控えたことがあげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度入手できなかった研究用キット試薬を次年度に購入する必要があるため、物品費に使用する予定である。また、一部を論文作成時の英文校正費および研究成果発表のための学会出張に充てることを計画している。
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