研究課題
ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は胃に生息するグラム陰性菌で、世界人口の約50%に感染しており、慢性胃炎、消化性潰瘍や胃癌の主な原因の一つである。ヘリコバクター属の細胞壁を構成する主要な分子として、コレステリル-alpha-グルコシド類(alphaCG類)が同定されている。以前に、私達は、alphaCG類がコレステロール-alpha-グルコース転移酵素(alphaCgT)によって合成されることを報告した。近年、私達は、ピロリ菌のalphaCG類が免疫担当細胞の一つであるインバリアントNKT(iNKT)細胞の活性化を引き起こすことを明らかにした。本研究は、ピロリ菌がもつalphaCG類によって活性化するiNKT細胞の病理学的および免疫学的な機能を明らかにすることを目的とする。平成24年度は、5つの実験計画のうち、3つにおいて遂行した。(1)iNKT細胞によるalphaCG類の認識では、in vitroおよびin vivoの両レベルにおいて、alphaCG類がiNKT細胞を活性化することを明らかにした。(2)ホモロジーモデリング法により、aCgTの立体構造を推測した。(3)aCgT改変ピロリ菌を用いて、マウスのピロリ菌感染時におけるiNKT細胞の発現や、サイトカインレベルの変動を解析した。
2: おおむね順調に進展している
本申請では、次のような5つの実験計画を立案している。(実験1) in vivoレベルでのalphaCG類によるiNKT細胞の活性化の測定、(実験2)alphaCG類とCD1dとの分子間相互作用の解析、(実験3) ピロリ菌の初期感染におけるiNKT細胞の制御機構とネットワークの解明、(実験4) パラフィン包埋胃生検ブロックを用いたiNKT細胞と免疫担当細胞の発現、(実験4) パラフィン包埋胃生検ブロックを用いたiNKT細胞と免疫担当細胞の発現、(実験5) ピロリ菌感染から慢性炎症や胃癌への進行におけるiNKT細胞の機能解析、である。このうち、平成24年度は、実験1-3において結果が得られたため、当初の予定通りに研究が進んでいる。
当初の研究計画通り、5つの実験計画のうち、平成25年度は、(実験4) パラフィン包埋胃生検ブロックを用いたiNKT細胞と免疫担当細胞の発現、(実験5) ピロリ菌感染から慢性炎症や胃癌への進行におけるiNKT細胞の機能解析、について研究を行う。現在のところ、条件検討など順調に進んでおり、実験計画通りに遂行できる見込みである。
備品を除いて、消耗品、旅費などは研究計画書の通りに使用する予定である。消耗品として、プラスチック消耗品、一般汎用試薬、分子生物試薬、微生物用試薬・培地などを購入する予定である。旅費は、日本糖質学会年会や、米国糖質学会などに参加する予定である。備品については、当初、高速冷却遠心機を計上していたが、異動先の研究室では、高速冷却遠心機が既に設置してある。よって、本申請での高速冷却遠心機の購入は見直しを検討したいと考えている。
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