研究課題
ヘリコバクター属の細胞壁を構成する主要な分子としてコレステリル alpha-グルコシド (aCGL)とaCGLから合成される誘導体がコレステリル alpha-グルコシド類 (aCG類)として同定されている。私達は、aCGLの合成に関与するコレステロール alpha-グルコース転移酵素 (aCgT)が、胃粘膜深部の粘液に発現している特異的なO-結合型糖鎖によって阻害されることより、ピロリ菌の増殖抑制や形態異常を生じることを報告してきた。aCG類がピロリ菌感染にどのような影響を及ぼしているか長い間不明であったため、本研究の一連の研究結果より、aCG類のピロリ菌感染における役割を明らかにした。(1) 胃粘膜標本の病理学データと臨床分離株のaCgT活性の解析より、aCgT活性は胃萎縮の程度と正の相関を示したことから、aCgTから合成されるaCG類は細胞障害性に関与していることが示唆された。(2) ピロリ菌のaCG類は宿主側の免疫担当細胞に認識されるかどうかを調べると、CD1d上で提示されたピロリ菌のaCG類はインバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞を活性化することが明らかになった。(3) 活性化したiNKT細胞のピロリ菌感染における機能を明らかにするため、野生型マウスおよびiNKT細胞欠損マウスへのaCgT遺伝子改変ピロリ菌を用いた短期感染実験を行ったところ、活性化したiNKT細胞はピロリ菌の排除に関与していた。これらの研究結果より、aCgTによって生合成されるaCG類が胃粘膜の萎縮をはじめとする炎症の惹起に関与していること、一方で、宿主側にとってaCG類がiNKT細胞に対する免疫応答を引き起こしてピロリ菌の排除に機能していることは、aCG類が胃粘膜傷害の程度を決定する一因になりうることを示唆している。
すべて 2013
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PLoS One
巻: 8 ページ: e78191
10.1371/journal.pone.0078191