肝幹・前駆細胞であるThy1陽性オーバル細胞はRetrorsine/部分肝切除モデルに対するin vivo移植実験において,移植巣を形成せず,治療効果は低いと考えていたが,更なる解析の結果,Thy1陽性細胞移植によりレシピエント由来の肝前駆細胞(Small hepatocites-like progenitor cells; SHPCs)の増殖を促進していることを見出した。そこで増殖メカニズムを解析するため,Laser Micro-dissection法を用いて凍結肝組織切片からSHPCsの細胞集塊を回収,RNAを抽出し,移植していないcontrol群とThy1陽性細胞移植群のSHPCsの遺伝子発現をDNA microarrayを用いて細胞増殖関連遺伝子発現を中心に解析したところ,Interleukin17 receptor B (IL17RB)の発現が有意に高いことが示唆され,Realtime PCRでも確認した。IL17RBに反応する増殖因子として,IL17BとIL25が考えられるが,移植したThy1陽性細胞や成熟肝細胞自体における遺伝子の発現は低かった。このことはIL17RBの発現亢進は,レシピエント由来の他の細胞が分泌している事を示唆している。そこで,Retrorsine/部分肝切除モデルでcontrol群とThy1陽性細胞移植群の肝臓からSE-1陽性類洞内皮細胞とCD68陽性Kupffer細胞をMACS法で単離し,IL17BとIL25の発現をRealtime PCRで解析した。結果,control群と比較して,Thy1陽性細胞移植群で,類洞内皮細胞ではIL17Bが,Kupffer細胞ではIL25の発現が高かった。以上の結果は,Thy1陽性細胞移植は,類洞内皮細胞やKupffer細胞を活性化させ,IL17BやIL25などの細胞増殖因子の分泌を促進することで,内在性の肝前駆細胞の増殖を促進している可能性が示唆された。現在,IL17BやIL25における肝前駆細胞の増殖促進や,類洞内皮細胞やKupffer細胞の発現亢進のメカニズムを中心に解析している。
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