研究課題
統合失調症は人口の約1%で発症すると言われており、躁(そう)や鬱(うつ)の症状を示す。その多くは思春期以降に発症し慢性、進行性の症状を示す。しかしその根本的な発症要因は未だ解明されておらず、遺伝的、環境的な要因が存在すると考えられている。これまでに統合失調症関連蛋白質DISC1と結合する新規の蛋白質CAMDIを発見した。CAMDIは胎児発生中の大脳皮質中間帯に発現が認められた。秩序だった神経細胞の移動により、将来の大脳皮質6層構造の形成が行われることが知られている。これらのことから、子宮内遺伝子導入法を用いてマウス胎児においてCAMDI遺伝子の発現を抑制したところ、有意に神経細胞の移動が阻害された。次に、CAMDI遺伝子のノックアウトマウスを作製した。子宮内遺伝子導入法を用いることでノックアウトマウスにEGFP遺伝子を発現させ、個体内における個々の神経細胞の移動や突起伸長、スパインを可視化させて詳細な観察を行った。その結果、神経細胞の移動異常、樹状突起の短縮、スパイン密度の増加が認められた。これらの所見は、精神疾患患者の剖検脳でも確認されていることから、CAMDIノックアウトマウスを精神疾患モデルマウスとして考えることができる可能性が示唆された。そこで行動学的な解析を行い、精神疾患様の表現型の有無を調べた。その結果、多動や社会性の低下、繰り返し行動の増加など、自閉症を含む発達障害とよく似た表現型が認められた。CAMDI遺伝子は染色体2q31の領域に存在するが、この領域は自閉症患者におけるリスク領域であることも知られている。これらのことから、CAMDIが脳の発達に重要な役割を担うこと、さらにCAMDIの異常が発達障害の発症に関与する可能性が示唆された。
すべて 2013
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Molecular Cell
巻: 51 ページ: 20-34
10.1016/j.molcel.2013.04.023.