研究課題/領域番号 |
24790393
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
釘田 雅則 藤田保健衛生大学, 疾患モデル教育研究センター, 助教 (50440681)
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キーワード | 多発性嚢胞腎症 / RXR |
研究概要 |
申請者らは、平成24年度に多発性嚢胞腎症(PKD)モデル動物であるCyラットの腎臓におけるリガンド依存的核内受容体retinoid X receptor(RXR)の解析を行い、+/+ラットの腎臓では45kDa RXRが蓄積しているのに対して、Cy/+ラットの腎臓では45kDa RXRだけでなく、53kDa RXRが蓄積していること、53kDa RXRのセリン、スレオニンがリン酸化されており、その内少なくとも260番目のセリン、82番目のスレオニンがリン酸化されているという新知見を得ている。これらの新知見は、RXRの異常修飾と嚢胞形成との関連性を強く示唆している。 平成25年度は、まずRXRの経時的変化を調べ、病態進行との関連性を調べた。嚢胞がほとんど形成されていない4週齢のCy/+ラットでは53kDa RXRが蓄積しておらず、嚢胞の病状が表れる8週齢以降のCy/+ラットに53kDa RXRが蓄積していた。これはRXRがPKDの病態進行に関与していることを示唆している。 次にRXRの異常修飾の改善がPKDの病態を抑制するかをヒトの嚢胞腎の不死化細胞を用いて検証した。RXRの正常な経路を促進するRXRリガンドおよびRXRをリン酸化していると考えられるMEKの阻害剤は、それぞれ細胞増殖活性を抑制し、両者を併用すると相乗抑制効果を示した。これらの結果はPKDにおけるRXRを介した新規治療薬を提案するだけでなく、併用投与という新規治療方法も提案する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度では、PKDモデル動物を用いて、嚢胞腎においてRXRが異常修飾されていることを示した。PKDでは、リン酸化RXRが蓄積することにより嚢胞が形成されていると考えられる。 平成25年度は、ヒト嚢胞腎の不死化細胞を用いて、このRXRの異常修飾を改善することが嚢胞形成抑制に繋がることを示した。RXRリガンドおよびMEK阻害剤の単独使用より、併用使用において53kDa RXRの発現量が有意に減少し、細胞増殖活性が抑制された。RXRの異常修飾を改善するためには、リン酸化を抑制することと、RXRの分解を促すことの両方が重要であると考えられる。現在は、PKDモデル動物にMEK抑制剤およびRXRリガンドを投与し、生体におけるPKDの病態抑制効果の検証を行っている。 当初の目的通り、PKDにおけるRXRの異常修飾およびその改善による病態抑制効果に対する道筋を示すことができていると考えられる。平成26年度では、PKDモデル動物に対するMEK抑制剤およびRXRリガンドの投与結果をまとめて本研究を完了させる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、平成25年度のヒト嚢胞腎の不死化細胞の実験結果を基に、PKDモデル動物にMEK阻害剤およびRXRリガンドの単独及び併用投与を行い、PKDの病態抑制効果の検証を行う。ただし、細胞に用いたMEK阻害剤を動物に投与すると副作用が予想されるため、MEKの抑制が期待できる別の薬剤を投与することとする。 当初の予定では、PKDモデル動物としてCyラットを使用する予定であったが、繁殖効率が悪いため、また併用効果の検証により投与群が増えたため、繁殖効率の良い別のPKDモデル動物であるjckマウスを使用することとする。jckマウスにおいても53kDa RXRは蓄積しており、本研究の使用に適していると考えられる。jckマウスの寿命は約12週齢であるため、投与期間を4週齢から8週齢までに変更する。MEK抑制剤の選択、MEK抑制剤およびRXRリガンドの濃度を検討しつつ、それらの単独および併用投与によるRXR発現量の変化およびPKDにおける病態抑制効果(腎体重比、嚢胞面積、線維化領域、血清尿素窒素量)を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、細胞を用いてRXRの異常修飾改善に伴うPKDの病態抑制効果の検証を行ない、その結果を基にPKDモデル動物に投与実験を開始する予定であった。概ね予定通りに進行したが、投与実験に使用する予定であったPKDモデル動物であるCyラットの繁殖効率が悪かったため、別のPKDモデル動物であるjckマウスを使用することとした。そのため、使用予定金額にズレが生じ、次年度への繰り越しが生じている。 また、細胞の実験において、有意差検定を行うために複数回同一の実験を行う必要があり、そのための費用が次年度に持ち越されている。 投与実験に使用するPKDモデル動物をCyラットからjckマウスに変更したため、餌や投与試薬に関わる費用が減額される。その代わり、jckマウスの遺伝子型判定にはreal-time PCRが必要となるため、そのための費用が追加される。平成26年度はRXRリガンドおよびMEK抑制剤をjckマウスに単独もしくは併用投与を行ない、PKDの病態に及ぼす効果を検証する。同時に、有意差検定を行うために細胞の繰り返し実験も行う。 これまでに得られた成果をまとめ、学会等で発表を行ない、その成果を社会・国民に随時発信する。
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