マクロファージはその活性化経路の違いによってM1型とM2型の2種類に大別される。M1型は炎症応答を惹起し、細菌やウイルス感染に対する宿主防御に関わる。一方、M2型は抗炎症反応や寄生虫感染応答に関与している。微生物感染による炎症やストレス応答の際、サイトカインやストレス関連タンパク等の迅速な量的調節が行われることで、各々のマクロファージは異なる機能を的確に発現できると考えられるが、その制御機構については全く未知である。本研究ではmRNAの翻訳抑制あるいは分解の場として知られているStress granule (SG)やProcessing body (P-body)といった細胞質内RNA顆粒(mRNP)が、感染応答時におけるマクロファージの翻訳制御に重要な役割を果たすのではないかという着想のもとに実験を行った。 まずM1およびM2型に分化させたヒトマクロファージ細胞株におけるmRNPの動態解析を行った。その結果、M2型ではM1型と比較して酸化ストレス刺激によるSG形成が顕著に誘導された。一方、M1型では酸化ストレスおよびTLR4リガンドの刺激によるP-bodyの形成誘導率がM2型に比べ有意に高かった。またP-bodyの構成タンパクであるEDC4およびDcp1aをノックダウンしたM1型マクロファージでは、IL-6のmRNA量に変化がない一方で、 IL-6タンパクの産生量が著名に減少した。 本研究の結果から、炎症応答時のSGやP-bodyの形成がマクロファージの分化状態によって異なる制御を受けていることがわかった。またP-body を構成するEDC4タンパクおよびDcp1aタンパクがIL-6の転写後調節に必要であることが明らかとなった。
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