研究課題
本年度は、まずマラリア感染防御におけるCD8T細胞の重要性を再確認した。C57BL/6マウスに弱毒株マラリア原虫Plasmodium yoelii 17XNL (PyNL)を感染させると、ほぼすべての個体が1ヶ月以内に治癒するのに対し、抗体を用いてCD8T細胞を除去した群では、虫血症が重症化し半数程度のマウスが死亡した。感染防御を担う分子として細胞傷害活性を有するFasLに着目した。FasLに変異をもつgldマウスにPyNLを感染させると、抵抗性が弱く半数程度のマウスが死亡した。PyNLおよび強毒株PyLを用いた生ワクチンおよび細胞移入実験で、CD4T細胞あるいはCD8T細胞のどちらがFasLを防御に用いているかを検討したところ、CD8T細胞が本分子を利用していることを確認した。FasLの受容体であるFasを原虫感染赤血球系細胞が発現していた。CD8T細胞はFasLにより原虫感染赤血球系細胞上にフォスファチジルセリン(PS)の表出を誘導した。PSは「eat meシグナル」として知られているように、PSを多く発現する感染赤血球系細胞の方がマクロファージにより貪食されやすいことが明らかとなった。以前の我々の報告と合わせて、CD8T細胞による赤内期マラリア感染防御機構はIFN-γによるマクロファージの活性化および、FasLやパーフォリンによる感染赤血球系細胞への細胞傷害による効率的な貪食の誘導であると結論づけた。昨年度マラリア原虫が赤血球の前駆細胞である赤芽球にも寄生することを発見しScientific Reports 誌3,Article number:1572に報告した。しかしながら「マラリア原虫が赤芽球に感染する」その意義は不明である。原虫が赤芽球に寄生する利点や原虫赤芽球に対する宿主防御免疫機構を明らかにすることがマラリア撲滅への鍵となるかもしれない。
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