研究課題/領域番号 |
24790405
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
新倉 保 杏林大学, 医学部, 助教 (30407019)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Pb ANKA / Pb XAT / MHC class II / T細胞受容体 |
研究概要 |
強毒株Plasmodium berghei (Pb) ANKAをマウスに感染させると、マウスは感染後10日以内に脳症を発症し、死亡する。脳症の発症には宿主免疫応答が関与することが広く知られている。一方、弱毒化原虫Pb XATをマウスに感染させると、Pb XATはマウス体内で増殖するものの最終的にマウスの防御免疫によって排除される。これらの結果から、Pb ANKA感染とPb XAT感染の間で宿主免疫応答は全く異なると推測される。 CD4+T細胞の活性化は、抗原提示細胞のMHC class II (MHC II) とT細胞受容体 (TCR) との結合によって誘導される。そこで本研究では、Pb ANKA感染およびPb XAT感染におけるCD4+T細胞の活性化とMHC IIとの関連性を明らかにするためにMHC II欠損マウスを用いて解析を行った。 解析の結果、Pb ANKAを感染させたMHC II欠損マウスは脳症を発症しなかったことから、Pb ANKA感染における脳症の発症にはMHC IIとTCRの結合を介して活性化されたCD4+T細胞が関与することが明らかになった。次に、Pb XATをMHC II欠損マウスに感染させたところ、Pb XAT感染MHC II欠損マウスの原虫血症は野生型マウスと比較して著しく増悪し、マウスは死亡した。この結果から、Pb XAT感染における防御免疫の誘導にはMHC IIとTCRの結合を介して活性化されたCD4+T細胞が関与することが示された。 本研究の成果から、CD4+T細胞はPb ANKA感染、Pb XAT感染ともにMHC IIとTCRの結合を介して活性化されることが明らかとなった。一方、Pb ANKA感染とPb XAT感染の間でCD4+T細胞の役割は全く異なることから、両感染間でMHC IIとTCRの結合によるCD4+T細胞活性化機構が異なると推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 強毒株Pb ANKA 感染における脳症とMHC IIとの関係は、これまで明確に示されていなかった。本研究で、MHC IIの発現に必須な転写因子であるCiitaを欠損したマウスを用いることで、強毒株Pb ANKA感染における脳症の発症にはMHC IIとTCRの結合を介して活性化されたCD4+T細胞が関与することが初めて明確に示された。 2. 弱毒株原虫Pb XAT感染において、防御免疫の誘導に重要な役割を果たすCD4+T細胞は、MHC IIとTCRの結合を介して活性化されることが明らかとなった。 3. 上記1と2の結果から、CD4+T細胞はPb ANKA感染、Pb XAT感染ともにMHC IIとTCRの結合を介して活性化されるが、その活性化機構が両感染間で異なると推測できた点で本年度の目的は達成されたと考える。 4. 本年度の研究計画の通り、赤色蛍光色素を導入したPb ANKAおよび緑色蛍光色素を導入したPb XATを用いて、複合感染における強毒株Pb ANKAと弱毒化原虫Pb XATのそれぞれの動態を解析したところ、複合感染時におけるPb ANKAとPb XATのそれぞれの感染動態を見分けることに成功した。よって、本年度の目的は達成された。
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今後の研究の推進方策 |
1. Pb ANKA感染においてTCR Vβ8鎖を発現しているCD4+T細胞が増加することが報告されている。一方、Pb XAT感染におけるCD4+T細胞は、Pb ANKA感染におけるCD4+T細胞とはTCR Vβの発現パターンが変化していると考えられる。そこで、Pb ANKAまたはPb XAT感染後1-2日目および6日目におけるCD4+T細胞のTCR Vβの発現パターンを解析する。 2. 強毒株と弱毒化原虫の間でCD4+T細胞上のTCR Vβの発現パターンに変化が認められた場合、複合感染において弱毒化原虫特異的CD4+T細胞が誘導されているかどうかを解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
強毒株Pb ANKAと弱毒化原虫Pb XAT感染におけるCD4+T細胞を採取するためのマウスと、CD4+T細胞を精製するためのMACS関連試薬、RNA抽出関連試薬、CD4+T細胞上のTCR Vβレパートリーの多様性を迅速かつ高感度に定量・検出するTCRVβレパートリークローン検出キットの購入を計画している。
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