研究課題
エキノコックス症は、ヒトに深刻な健康被害をもたらす人獣共通寄生虫症である。人体エキノコックス症の原因となる幼虫期虫体は、宿主組織内に寄生し、栄養素を宿主から奪い取ることにより活発な発育増殖を維持している。エキノコックスは消化管を持たず、宿主と接する体表面から栄養素を摂取する。しかし、栄養素の輸送を担う分子実体についてはほとんど分かっていない。そこで本研究では、虫体によるエネルギー代謝の出発点となるグルコース輸送を担うトランスポーターに着目した。解析の結果、2種類の促通拡散型トランスポーター様遺伝子(EmGLUT1、EmGLUT2)および1種類の能動輸送型トランスポーター様遺伝子(EmSGLT)の全長配列を取得した。EmGLUT1およびEmGLUT2は、それぞれ509個および500個のアミノ酸をコードし、予測された構造上の特徴は、典型的なGLUT(受動輸送型トランスポーター)と一致した。一方、EmSGLTは698個のアミノ酸をコードし、予測された構造上の特徴は、典型的なSGLT(能動輸送型トランスポーター)と一致した。これらの結果から、エキノコックスによるグルコース摂取には、促通拡散型および能動輸送型の両タイプのトランスポーターが機能していることが示唆された。全長アミノ酸配列に基づく系統解析では、2種類のEmGLUTは、いずれもヒト由来および有鉤条虫由来のGLUTと同じグループを形成した。一方、EmSGLTはヒト由来およびマガキ由来のSGLTと同じグループを形成した。以上の結果から、エキノコックスによるグルコース摂取には、少なくとも2種類の促通拡散型トランスポーター(EmGLUT1、EmGLUT2)と1種類の能動輸送型トランスポーター(EmSGLT)が関与することが示唆された。現在、各トランスポーターの輸送機能解析に加えて、虫体発育にともなう発現転換の解析を実施中である。
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