研究課題/領域番号 |
24790414
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡田 和久 大阪大学, 微生物病研究所, 特任助教 (40420434)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | タイ |
研究概要 |
コレラ菌TSY216株からの調製ゲノムをRoche GS FLX Titanium(8 kbのペアエンドライブラリ)を用いてシークエンスを行った。 Newblerによるアセンブル後、3.07 Mb、1.06 Mb、0.9 Mbの大きなスキャッフォールドを得た。ギャップの配列未決定領域はPCRやクローニング、トランスポゾン等を用いた方法で抽出し、その部分をサンガーシークエンシング法により配列決定をし、ギャップクローズをした。次に、Illuminaシークエンサーの100 bpペアエンド解析データを用いて、GS FLXにおいてエラーが生じやすいホモポリマーサイトの修正と全配列の確認を行った。 TSY216株のゲノム配列をコレラ菌参考株N16961のそれとドットマトリックスシークエンスアライメントを行う事により比較した。TSY216株の大染色体及び小染色体はそれぞれ、N16961株の大及び小染色体と高い相同性を示した。一方で、パルスフィールドゲル電気泳動法で示された巨大レプリコンは、896 Kbのサイズであり、コレラ菌の大小染色体と相同な部分を示さなかった。尚、TSY216株のGC含量は大小二つの染色体が、約47%でN16961株と同じであるのに対し、この第3のレプリコンは約37%と極めて低かった。外来から獲得されたレプリコンであることが示唆された。5 Kbに渡るタンデムリピート配列や35個の連続したtRNA群は配列決定を困難にさせた領域であった。第3のレプリコンにtRNAが47個確認されており、20種類のアミノ酸に対応していた。rRNAは見出されていない。 RASTにより遺伝子領域を推定した結果、1000近くのORFsが検出されたが、これらはデータベース上の既知の配列との相同性が低く(アミノ酸レベルで30%程度)、それらの由来と機能を推定し得ないゲノム構造を有することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.TSY216株の全ゲノム塩基配列を決定したこと。 2.大小二つの染色体の他に896 Kbの超巨大レプリコンを保有することを確認したこと。 3.大小二つの染色体はコレラ菌が本来保有するものと相同であるが、第3のレプリコンについては、他株のコレラ菌ゲノムと特に相同な部分を示さなかったこと。 4.第3のレプリコンは外来由来と思われ、由来と機能を推定し得ないゲノム構造を有することを示したこと。
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今後の研究の推進方策 |
TSY216株の保有する大、小染色体が既知のどのコレラ菌株のものに近いかどうか系統解析を行う。第3のレプリコンの獲得機構、複製機構、起源及び役割の理解を目指す。そのために、推定遺伝子領域の機能予測・パスウェイ解析を進める。メタゲノムデータベースも活用し、起源由来を考察する。TSY216株の第3のレプリコンの脱落株の作製を試みる。TSY216株を多様な条件下で培養し、表現型の特徴・変化を他株と比較しながら観察する。遺伝子発現データ解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
多様な条件下でのTSY216の培養及び観察、生化学的性状試験、遺伝子組み換え実験、遺伝子発現解析などの試薬購入費等。
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