研究概要 |
本研究では、気管支敗血症菌のゲノムライブラリーを導入した百日咳菌をラットに感染させ、IVET-IP法により感染ラットの気道における共試菌の遺伝子発現の変化を網羅的に解析することを目指す。本年度はまず、百日咳菌のラットにおける感染条件について検討を行った。ラットは気管支敗血症菌の自然宿主ではあるが、百日咳菌の宿主ではない。そこで、本研究に適した百日咳菌の感染菌数を検討するために、種々の濃度に調製した百日咳菌をラットに経鼻感染させ、感染後のラット気道における菌数の経時的推移を確認した。その結果、百日咳菌は感染後徐々にクリアランスされ、15日目ではほとんど検出できなくなった。この結果から、ラットにおける百日咳菌感染は高濃度 (100,000,000 cfu/ラット) で菌を感染させた場合でも持続しないことがわかった。特に、9日目前後で菌数の減少が著しかったことから、感染が維持できないなんらかの事由がこの時期にあると予想され、この時期 の前後で菌を回収し遺伝子発現の変化を気管支敗血症菌のそれと比較解析することで、その理由を明らかにできる可能性がある。しかし、百日咳菌は徐々にクリアランスされていくため、感染一週間後にIVET-IP法で必要な1,000,000 cfuの菌を回収することは難しい。そのため、少量のゲノムライブラリーからcDNAを合成する際に偏りが起こりにくい大幅な増幅過程を新たに加えてマイクロアレイのサンプルを調製する方法を検討中である。
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