研究課題
しばしば食中毒原因菌として分離されるアエロモナス(あるいはエロモナス)は筋壊死や蜂巣炎といった軟部組織の壊死性疾患や敗血症の起因菌としても報告される。これら重篤症状は本菌の産生する菌体外毒素が関与すると考えられ、これまでに菌体外プロテアーゼであるセリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼの解析を進めてきた。A. trotaのセリンプロテアーゼは25℃培養では産生されるが、37℃では産生されない。そこで、25℃培養の培養上清からセリンプロテアーゼを精製し、精製プロテアーゼを用いてアゾカゼインに対する分解活性を測定した。その結果、A. trotaセリンプロテアーゼはA. sobriaセリンプロテアーゼに比べ、およそ2倍高い活性を示した。また、本プロテアーゼの産生条件を検討した結果、A. trotaセリンプロテアーゼは37℃での培養であってもスキムミルク存在下では産生される事を見出した。スキムミルク存在下では本遺伝子の転写量が増加する事を明らかにした。このスキムミルクによる産生亢進作用はA. trotaだけでなく、A. sobriaでも同様に生じた。しかし、スキムミルクの主要な構成成分であるカゼインやラクトースではセリンプロテアーゼ産生亢進作用は見られなかった。一方、アエロモナスの産生するメタロプロテアーゼの解析を進めるため、不安定なメタロプロテアーゼ中間体の精製方法を検討した。中間体は容易に自己分解が生じ、C末端ドメインを失った安定な活性体に変換される。そこで、遺伝子改変操作を用いて、安定的な中間体の作製を試みた。しかし、得られた形質転換株は活性体を多く産生する株は得られたが、中間体は産生しなかった。そこで次に、in vitro発現系を用いた作製を試みた。その結果、遺伝子全長が翻訳された蛋白質がわずかに生合成できた。本法を用いる事で中間体の精製が可能ではないかと期待される。
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